キップリング(読み)きっぷりんぐ(英語表記)Joseph Rudyard Kipling

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キップリング」の意味・わかりやすい解説

キップリング
Kipling, (Joseph) Rudyard

[生]1865.12.30. ボンベイ
[没]1936.1.18. ロンドン
イギリスの小説家,詩人インドで生れイギリス本土で教育を受けたあと,インドに戻り,ジャーナリズムに身を投じ,インド,海洋,ジャングル軍隊などを題材とする短編小説によって名をあげた。初期の『高原平話』 Plain Tales from the Hills (1888) はその一つ。 1889年本国に帰る。狼に育てられ,種々の野獣と交わりながらジャングルの掟を学ぶ少年モーグリの物語ジャングル・ブック』 The Jungle Book (94) や,ラマ僧に従って放浪するうち軍隊に拾われ,密偵となって活躍する少年の物語『キム』 Kim (1901) などは,少年読物として世界的に名を知られている。兵士や水夫の生活を歌った彼の詩作は,当時きわめて人気があり,92年出版の『兵営の歌』 Barrack-Room Balladsの売行きは,かつてのバイロンをもしのぐといわれ,同年の桂冠詩人テニソン死去の際も,大衆の声は一致して後任キップリングを推したといわれる。その後も多くの物語を書いて人気を維持したが,それを支えるものは,インドの風物異国情緒と当時の帝国主義的な思潮であった。そして彼が第1次世界大戦以後忘れられるようになったのも,また時代思潮変化によるものといえよう。 1907年ノーベル文学賞受賞。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キップリング」の意味・わかりやすい解説

キップリング
きっぷりんぐ
Joseph Rudyard Kipling
(1865―1936)

イギリスの小説家、詩人。インドのボンベイ(現、ムンバイ)生まれ。イギリス本国で教育を受け、1882年以降インドで新聞記者として活動、かたわら詩集や、『高原平話』(1888)などインド在住のイギリス人を扱った7冊の短編集を出版した。日本、中国、アメリカ、アフリカなどに旅行し、1889年イギリスに落ち着いた。インド駐屯の愛国的イギリス兵を兵隊ことばで歌った詩集『兵営の歌』(1892)、オオカミに育てられる少年や動物を主人公にした児童文学『ジャングル・ブック』(1集・1894、2集・1895)、ラマ僧とインドを旅する少年探偵を描いた小説『キム』(1901)などを発表し好評を博した。いずれも当時の大英帝国の政策にマッチした作品であるが、異国的な、たくましい行動の世界を平易な文体で描いて、内面分析にはまり込んだ大陸文学に新風を吹き込んだ。1907年ノーベル文学賞受賞。

[安達美代子]

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