ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キップリング」の意味・わかりやすい解説
キップリング
Kipling, (Joseph) Rudyard
[没]1936.1.18. ロンドン
イギリスの小説家,詩人。インドで生れイギリス本土で教育を受けたあと,インドに戻り,ジャーナリズムに身を投じ,インド,海洋,ジャングル,軍隊などを題材とする短編小説によって名をあげた。初期の『高原平話』 Plain Tales from the Hills (1888) はその一つ。 1889年本国に帰る。狼に育てられ,種々の野獣と交わりながらジャングルの掟を学ぶ少年モーグリの物語『ジャングル・ブック』 The Jungle Book (94) や,ラマ僧に従って放浪するうち軍隊に拾われ,密偵となって活躍する少年の物語『キム』 Kim (1901) などは,少年読物として世界的に名を知られている。兵士や水夫の生活を歌った彼の詩作は,当時きわめて人気があり,92年出版の『兵営の歌』 Barrack-Room Balladsの売行きは,かつてのバイロンをもしのぐといわれ,同年の桂冠詩人テニソン死去の際も,大衆の声は一致して後任にキップリングを推したといわれる。その後も多くの物語を書いて人気を維持したが,それを支えるものは,インドの風物の異国情緒と当時の帝国主義的な思潮であった。そして彼が第1次世界大戦以後忘れられるようになったのも,また時代思潮の変化によるものといえよう。 1907年ノーベル文学賞受賞。
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