イギリスの小説家,詩人。インドのボンベイに生まれ,インド人の乳母に育てられた。6歳で帰英し教育をうけたが大学へは進まず,1882年渡印してジャーナリズムに入った。88年,愉快な3人の兵卒が活躍する《三兵士》,在印イギリス軍人や文官の生活,土地の怪談,迷信,アヘン窟などに題材をとった《高原平話》の2冊の短編集を出し,これらが彼の出世作となった。92年アメリカ婦人と結婚し,一時アメリカに移り住んだが,その間,インド在住軍人の生活を歌い上げ一世を風靡した詩集《兵営の歌》(1892),狼に育てられた少年マウグリの物語で日本でも有名な《ジャングル・ブック》(1894),《続ジャングル・ブック》(1895)を出版しますます文名を高めた。96年に帰国,詩集《七つの海》を出版,99年のボーア戦争では強硬論を唱えた。1901年の,ラマ僧と旅行する孤児キムを主人公とした小説《キム》でインドの各方面の生活を生き生きと描き出し,この後も数多くの作品を発表した。彼の作品には大英帝国主義的な傾向,ひたすら法の側に立とうとする態度がみられるが,第1次大戦後はこの点が知識階級の反発を買うようになった。しかし児童文学者としての才能,特に動物への優れた共感は今でも少年たちに非常な魅力をもっている。
執筆者:鈴木 建三
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イギリスの小説家、詩人。インドのボンベイ(現、ムンバイ)生まれ。イギリス本国で教育を受け、1882年以降インドで新聞記者として活動、かたわら詩集や、『高原平話』(1888)などインド在住のイギリス人を扱った7冊の短編集を出版した。日本、中国、アメリカ、アフリカなどに旅行し、1889年イギリスに落ち着いた。インド駐屯の愛国的イギリス兵を兵隊ことばで歌った詩集『兵営の歌』(1892)、オオカミに育てられる少年や動物を主人公にした児童文学『ジャングル・ブック』(1集・1894、2集・1895)、ラマ僧とインドを旅する少年探偵を描いた小説『キム』(1901)などを発表し好評を博した。いずれも当時の大英帝国の政策にマッチした作品であるが、異国的な、たくましい行動の世界を平易な文体で描いて、内面分析にはまり込んだ大陸文学に新風を吹き込んだ。1907年ノーベル文学賞受賞。
[安達美代子]
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…少年小説もまたT.ヒューズの《トム・ブラウンの学校生活》(1857),R.バランタインの《サンゴ島》(1857),ウィーダOuidaの《フランダースの犬》(1872),シューエルA.Sewellの《黒馬物語》(1877)のあとをうけて,R.L.スティーブンソンの《宝島》(1883)で完成した。架空世界を取り扱った物語は,J.インジェローの《妖精モプサ》(1869),G.マクドナルドの《北風のうしろの国》(1871),R.キップリングの《ジャングル・ブック》(1894),E.ネズビットの《砂の妖精》(1902),K.グレアムの《たのしい川べ》(1908),J.M.バリーの《ピーター・パンとウェンディ(ピーター・パン)》(1911),W.デ・ラ・メアの《3びきのサル王子たち》(1910)にうけつがれ,ファージョンE.Farjeon《リンゴ畑のマーティン・ピピン》(1921)は空想と現実の美しい織物を織り上げた。さらにA.A.ミルンの《クマのプーさん》(1926)が新領域をひらき,J.R.R.トールキンの《ホビットの冒険》(1937),《指輪物語》(1954‐55)は妖精物語を大成する。…
…イギリスの詩人R.キップリングの物語集。1894年出版。…
※「キップリング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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