日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネズミギス」の意味・わかりやすい解説
ネズミギス
ねずみぎす / 鼠鱚
beaked salmon
[学] Gonorynchus abbreviatus
硬骨魚綱ネズミギス目ネズミギス科に属する海水魚。本州中部地方以南の太平洋と日本海、東シナ海、南シナ海に分布し、水深50~200メートルに生息する。体は円筒形に近く、吻(ふん)がやや長く、とがり、その下面に1本のひげがある。口は小さくて頭部の腹面に開き、歯を欠く。鱗(うろこ)は小さくて粗雑。背びれと臀(しり)びれが尾びれ近くにあること、腹びれは背びれ直下にあること、胸びれと腹びれの基部直上にそれぞれ1枚の小皮弁があることが著しい特徴である。背びれ、腹びれ、尾びれの各先端部と胸びれは黒い。体長は30センチメートル余りになる。産卵期は東シナ海では7~10月。底引網でときどき漁獲されるが、食用上の価値はない。コイ目やナマズ目を含む骨鰾類(こっぴょうるい)の特徴であるウェーバー器官に似た構造物があり、骨鰾類の前駆的魚類として系統分類上注目される。
[落合 明・尼岡邦夫]