日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノギク」の意味・わかりやすい解説
ノギク
のぎく / 野菊
特定の種を示すのではなく、キク科のノコンギク、ヤマシロギク、イナカギクなどのシオン類、ヨメナやユウガギクのヨメナ類、ミヤマヨメナなどの一般的通称。夏から秋に開花し、頭花がキク属Chrysanthemumに似て、山野にみられるので野菊という。
[小山博滋 2022年3月23日]
伊藤左千夫(さちお)の『野菊の墓』は、舞台が千葉県矢切(松戸市)で、墓地などに生える点を考えると、カントウヨメナAster yomena Honda var. dentatus Haraである可能性が高い。ヨメナはオハギの名で『出雲国風土記(いずものくにふどき)』、ウハギで『万葉集』に載る。野菊の名は茶会の記録に早く登場するし、『天王寺屋会記 宗達茶湯日記 自会記』に、永禄(えいろく)2年(1559)9月4日朝、野菊を使ったと書かれている。千利休(せんのりきゅう)も野菊に注目し、天正(てんしょう)18年(1590)9月23日秀吉が聚楽(じゅらく)の茶会を開いたおり、野菊一枝を天目茶碗(てんもくぢゃわん)と鴨肩衝(かもかたつき)茶入との間に挟み、効果的に演出した。
[湯浅浩史 2022年3月23日]