ノヤン(その他表記)noyan

改訂新版 世界大百科事典 「ノヤン」の意味・わかりやすい解説

ノヤン (諾顔
)
noyan

旧時代のモンゴルの王公の称号の一つ。官人,殿様,貴族の意味。ノヤン階層といえば平民(アラト)に対する支配者層を指した。12世紀末にチンギス・ハーンによるモンゴル部の統一後,万戸,千戸,百戸,十戸という十進法による軍制がしかれたが,それぞれの長はノヤンと呼ばれた。彼らはそうした軍事集団の長であるだけではなく,遊牧民集団の長でもあり,支配下の遊牧民に対し,遊牧地の割当て,遊牧の経路の指定,労働奉仕などのさまざまな指令を出すとともに,税の徴収裁判などを行った。
千戸制
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のノヤンの言及

【中央アジア】より

…このような〈遊牧帝国〉とも呼びうる強大な国家が,中央アジア史上に華々しい活動を見せた,匈奴突厥(とつくつ),ウイグル,モンゴル帝国等の諸国家である。 これらの遊牧国家ないし遊牧帝国の君長は,それぞれの国家ないし帝国の形成にあたって,その形成の中核となった特定の一氏族の成員の中から選出され,単于(ぜんう)ないしハーンの称号を名のったが,これらの君長の選出や,外国遠征等の国家の重要事は,その国家の構成メンバーである諸部族の支配者たち,すなわちベグないしノヤンと呼ばれた遊牧貴族たちから成る国会(クリルタイ)の議を経て決定された。すなわち遊牧国家の君長は,彼らが特定の氏族のみから選出されるというところに由来するある種のカリスマ性を具有していたにせよ,十分の統率力をもちあわせぬ場合には,ただちに遊牧貴族らによって交替させられるという意味において,決して絶対的な君主ではなかった。…

【モンゴル帝国】より

…テムジンは建国の過程で打倒した部やオボクの人畜多数を自分で保有し家族に与えた以外は,恩賞として主としてノクルに分与し管理させたようである。そして建国時にオボクとは別の遊牧民伝統の十進法的編成の千戸を国制の基本として採用し(オボクは消滅したわけではない),彼に仕えてきた功臣88人を千戸の長(ノヤン)に任命し,95の千戸を支配させたが,彼らの多くはノクルであったのである。多分彼らの率いた千戸の多くは,かつて彼らに分与された者たちを基礎に組織されたのであろう。…

※「ノヤン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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