ハイゴケ(その他表記)Hypnum plumaeforme Wils.

改訂新版 世界大百科事典 「ハイゴケ」の意味・わかりやすい解説

ハイゴケ
Hypnum plumaeforme Wils.

ハイゴケ科の大型の蘚類。東アジアに分布し,日本全国の低山地に普通にみられ,日当りのよい地上,岩上,樹幹の基部などに群生し,黄緑色から淡緑色のふわふわしたマットをつくる。茎は長さ10cm以上に達し,多数の枝を羽状に出す。葉は下半部が広卵形,上半部は披針形後方に向かって鎌形に曲がる。中央脈は短く不明瞭。雌雄異株で胞子体はかなりまれ。蒴(さく)は円筒状で湾曲し,傾斜する。蒴歯は内外2列に並ぶ。ヒメハイゴケH.oldhamii (Mitt.) Jaeg.et Sauerb.も全国の低山地に普通に産し,ハイゴケによく似るが,植物体が小さく枝の葉はひじょうに強く後方に曲がる。学名Hypnumはギリシア語hypnos(睡眠)に由来し,植物体が寝たように匍匐(ほふく)することに基づく。また古い時代にまくらの詰物として使われたことに基づくという意見もある。ドイツ語でもSchlafmoos(眠りゴケの意)という。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハイゴケ」の意味・わかりやすい解説

ハイゴケ
はいごけ
[学] Hypnum plumaeforme Wils.

コケ植物ハイゴケ科の代表的な種。ムクムクチリメンゴケともいう。低地から山地のやや日当りのよい草地、土上、岩上、屋根の上などに大きな群落をつくり、乾燥にも強い。植物体は長さ10センチメートルくらいで横にはい、1センチメートル内外の枝を茎の左右に数多く出す。葉は小さく、中ほどから先は一方に強く鎌(かま)状に曲がっている。胞子体は長さ3~5センチメートルの柄をもち、やや弓状に曲がった蒴(さく)をもつ。

 ハイゴケは直射日光が当たるような場所でも、湿気さえあればよく生えるので、芝のかわりに庭園に利用されることもある。アメリカなどでガーデンモスgarden mossとよんで庭に利用するのは、ハイゴケの仲間である。ハイゴケという名は、横にはって生えることからつけられた名であるが、同じような生育の仕方をするコケ植物はハイゴケ科以外にも数多くみられる。園芸家の間では、このようなコケ植物を総称してハイゴケとよぶこともある。

[井上 浩]

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