はたと

精選版 日本国語大辞典 「はたと」の意味・読み・例文・類語

はた‐と

〘副〙
① 突然、物がぶつかり合ったり落ちたりする音、また、そのさまを表わす語。はったと。ぱたと。ぱたっと。
(イ) 突然の音や動作についていう。
愚管抄(1220)五「義朝と一つ心になりて、はたと謀反をおこして」
(ロ) 人や物を勢いよく打ったり蹴ったりするさまにいう。
今昔(1120頃か)二八「此の鬼の頭の方を、はたと蹴(くゑ)たりければ」
② 動作や状態が急激に転換するさま。また、ある動作、状態に集中したり、とらわれたりするさまを表わす語。はったと。
(イ) 突然動作を中止するさま。困惑して途方に暮れるさま。
徒然草(1331頃)一三五「承らんと申されけるに、大納言入道、はたとつまりて」
(ロ) 思いがけず出会うさま。ばったり。
※中華若木詩抄(1520頃)上「赤壁と云処にて、はたと曹操に相逢ふ也」
(ハ) 視線を一点に停止させるさま。目を据えて強くにらむさま。
平家(13C前)九「馳来る敵をはたとまもて」
(ニ) 完全にその状態になるさま。まったく。すっかり。
※師郷記‐永享四年(1432)六月紙背「自是可進候之処、はたとはたと令忘却、于今遅々、為恐候」
※天草本伊曾保(1593)狐と野牛の事「ヤギュウノ コトヲバ fatato(ハタト) ウチワスレタ」
物事隙間猶予のないさま、また、ゆるぎなくしっかりとしているさまを表わす語。ぴっしりと。きっぱりと。しっかりと。はったと。
※平家(13C前)五「道にはたと続いて野も山も海も河も武者で候」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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