精選版 日本国語大辞典 「はたと」の意味・読み・例文・類語
はた‐と
- 〘 副詞 〙
- ① 突然、物がぶつかり合ったり落ちたりする音、また、そのさまを表わす語。はったと。ぱたと。ぱたっと。
- ② 動作や状態が急激に転換するさま。また、ある動作、状態に集中したり、とらわれたりするさまを表わす語。はったと。
- (イ) 突然動作を中止するさま。困惑して途方に暮れるさま。
- [初出の実例]「承らんと申されけるに、大納言入道、はたとつまりて」(出典:徒然草(1331頃)一三五)
- (ロ) 思いがけず出会うさま。ばったり。
- [初出の実例]「赤壁と云処にて、はたと曹操に相逢ふ也」(出典:中華若木詩抄(1520頃)上)
- (ハ) 視線を一点に停止させるさま。目を据えて強くにらむさま。
- [初出の実例]「馳来る敵をはたとまもて」(出典:平家物語(13C前)九)
- (ニ) 完全にその状態になるさま。まったく。すっかり。
- [初出の実例]「自レ是可レ進候之処、はたとはたと令二忘却一、于レ今遅々、為レ恐候」(出典:師郷記‐永享四年(1432)六月紙背)
- 「ヤギュウノ コトヲバ fatato(ハタト) ウチワスレタ」(出典:天草本伊曾保(1593)狐と野牛の事)
- (イ) 突然動作を中止するさま。困惑して途方に暮れるさま。
- ③ 物事に隙間や猶予のないさま、また、ゆるぎなくしっかりとしているさまを表わす語。ぴっしりと。きっぱりと。しっかりと。はったと。
- [初出の実例]「道にはたと続いて野も山も海も河も武者で候」(出典:平家物語(13C前)五)