改訂新版 世界大百科事典 「ハナイ」の意味・わかりやすい解説
ハナイ
flowering rush
Butomus umbellatus L.
湿地にはえるハナイ科の多年草。根茎は地下を横にはい,これから葉を出す。葉の基部は葉鞘(ようしよう)となり,葉身は線形で長さ約1m,幅6~8mm,中肋の背面が肉厚となって,断面は三角形である。夏に葉腋(ようえき)から高さ1~1.5mの直立する花茎を出し,先に散形状の集散花序をつける。花序の基部に卵形の苞葉があり,花柄の長さは各花によって異なる。花被片は内外2輪に6枚あり,いずれも花弁状で卵形,長さ約1.5cm,幅約1cm,淡紅色で背面に紫色の縦筋がある。おしべは9本あり,葯は赤紫色。心皮は6個が離生し,開花時には赤紫色で後に緑色となる。花柱は短い。各心皮の内面のすべての場所に多数の胚珠がつき,面生胎座と呼ばれる。種子は楕円形で縦筋がある。アジア大陸からヨーロッパにかけて,温帯と亜寒帯に広く分布する。中国東北部の湿地ではきわめて普通に自生している。ほかに世界各地で観賞用に栽培され,帰化している所も多い。ハナイ(花藺)の名称は英語や,ドイツ語のBlumenbinseなどの訳である。根茎は食用にされることがある。
執筆者:山下 貴司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報