胚珠(読み)はいしゅ(英語表記)ovule

  • ×胚珠

翻訳|ovule

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

種子植物において,心皮上に生じてのちに種子になる器官裸子植物では心皮が閉じないので珠はであるが,被子植物では心皮が閉じ,子房を形成するので胚珠はめしべを切らなければ見られない。胚珠は多くは2枚の珠皮に囲まれており,それぞれを外珠皮内珠皮という。珠皮に囲まれた内部を珠心といい,この中に胚嚢ができる。胚珠は珠柄によって心皮の胎座に連結している。珠皮は珠柄と反対側に珠孔というをもっている。また胚珠が珠柄を生じている点を合点 (ごうてん) という。胚珠は基本的には珠孔を頂部に向けているが (直生) ,植物の種類により珠柄がねじれて胚が横に向いたり (彎生) ,倒立したり (倒生) することがある。なお胚珠が生長して種子になると,珠皮は種皮となる。

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百科事典マイペディアの解説

種子植物のめしべに生ずる生殖器官。受精後は種子となる。裸子植物では胚珠が裸出するが,被子植物では子房内に1〜多数個生ずる。胚珠は珠心とそれを包む1〜2枚の珠皮からなり,先端には小さな珠孔があき,珠心は中に胚嚢を生ずる。胚珠は珠柄によって心皮の一部(胎座)とつながっているが,珠孔と珠柄の位置関係から直生胚珠,倒生胚珠,湾生胚珠に分けられる。
→関連項目種子被子植物

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大辞林 第三版の解説

種子植物の子房内にあって卵細胞を内蔵し、受精後種子に発達する部分。被子植物では心皮に包まれ、裸子植物では裸出している。シダ植物の大胞子囊のうに相当する。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

裸子植物および被子植物の胞子体がつくる雌性生殖器官。胚珠の中では雌性配偶体が発達し、受精と胚発生を行う。種子とはほとんど同義で、植物学では完熟したものを種子、発達中のものを胚珠とよぶ。[山下貴司]

裸子植物の胚珠

裸子植物とは、胚珠が裸出して外気と触れている植物をいう。ソテツやイチョウでは胚珠を外から見ることができるが、針葉樹では種鱗(しゅりん)などで覆われており、外からは見えない。しかし、種鱗は一方からかぶさっているだけであるため、胚珠はそのすきまを通して外気と触れている。
 裸子植物の若い胚珠では、まず、珠心が発達し、続いて珠皮が珠心を包むが、先端部には小さな穴(珠孔)を残す。多くの裸子植物では、珠孔は胚珠の基部と正反対の方向にあり、これを「直生胚珠」という。やがて、珠心の組織の中に大胞子母細胞が分化し、これが減数分裂を行って4個の大胞子をつくるが、このうちの3個はすぐに退化し、1個だけが発達を続ける。この大胞子は自由核分裂を繰り返し、大きな細胞の中央には液胞があり、その周辺には多数の核をもったものができる。これが若い雌性配偶体である。この雌性配偶体はシダ類の前葉体に相当するが、退化していて、胚珠の内部でのみ生活する。やがて、雌性配偶体の周辺部から細胞壁の仕切りができ始め、しだいに中央にまで及んでいく。このころになると、珠心の先端部が崩壊して花粉室ができ、ここから受粉粘液が分泌されて珠孔の外まであふれ出る。風で運ばれてきた花粉はこの粘液に付着する(受粉)。胚珠はその後も成長を続け、花粉室も拡大するが、粘液の量は、この段階では増えないため、花粉は粘液といっしょに珠孔から内側へ引き込まれることとなる。その後、珠孔は閉鎖する。
 裸子植物の場合、受粉から受精まで3か月から6か月かかるのが普通である。花粉室に入った花粉は、この間に発芽して、雄性配偶体に相当する花粉管を発達させる。受粉後も、雌性配偶体は珠心の組織を消化しながら成長を続け、やがて胚珠の体積の大部分を占め、その細胞内にはデンプンなどの栄養を蓄えるようになる。また、雌性配偶体の珠孔寄りの部分には数個の造卵器が分化する。ソテツやイチョウでは、花粉管は鞭毛(べんもう)のある精子を2個つくる。これが胚珠の中を泳いで造卵器にまで到達する(受精)。針葉樹では、2個の精核をつくり(鞭毛はない)、花粉管が造卵器と接するまで伸びると、先端が破れて、2個の精核が造卵器の中に注入される。精核にはやや大小があり、大きいほうが卵核と合体する。受精後の発達については「種子」と「胚」の項を参照されたい。[山下貴司]

被子植物の胚珠

被子植物とは、胚珠が心皮によって密閉され、外気と遮断されている植物をいう。モクレン科などでは心皮が離生するが、普通は、いくつかの心皮が合着して子房をつくっている。被子植物の胚珠には直生するものもあるが、多くは折れ曲がって柄と珠孔が同じ方向となる。これを「倒生胚珠」という。珠皮は二枚のものと一枚のものとがある(原始的な種類では二枚の場合が多い)。大胞子のでき方は裸子植物と同じで、4個の大胞子のうちの1個が発達する。しかし、被子植物では、この大胞子が普通は3回の核分裂を行って八核の状態になると発達が止まる。つまり、被子植物の雌性配偶体は裸子植物よりもさらに退化が進んでいるといえる。この雌性配偶体は核が特別な配列をしているので、とくに「胚嚢(はいのう)」とよばれる。
 被子植物の場合、花粉は心皮の先端にある柱頭につき、そこで発芽して花粉管を花柱の中へ伸ばし、さらに心皮の内腔(ないこう)にある胚珠の珠孔まで到達する。多くの被子植物では受粉の数時間後には受精がおこる。花粉管は胚嚢の助細胞の中に入り、そこで2個の精核を放出する。精核の一つは卵細胞の核と合体して胚をつくり、他の一つは中央核と合体して内胚乳をつくる(これを重複受精という)。鞭毛のない精核がどうして目的物まで動くことができるかということについては、まだ不明な点が多い。なお、受精後の発達については「種子」「胚乳」「胚」の項を参照されたい。[山下貴司]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙
① 子房のなかで形成され、将来種子となる器官。胚嚢・珠心・珠皮からなる。珠柄を通じて胎座についていて、珠柄と珠孔(珠心が珠皮に包まれていない部分)との位置関係から、直生・倒生・湾生などに区別される。裸子植物では胚珠は心皮に直接着生して裸出している。〔植学訳筌(1874)〕
② 比喩的に、将来形成されていくもののもとになるもの。
※俳句の世界(1954)〈山本健吉〉四「後に正風俳諧として大成することができた胚珠(ハイシュ)が」

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世界大百科事典内の胚珠の言及

【子房】より

…被子植物にみられる構造で,めしべが袋状となり,中に胚珠ovuleが入っている部分で,熟すとになる。胚珠は子房壁ovary wallにより囲まれた子房室loculeの中にあり,外界から隔離されていて,胚珠が病気や虫により直接おかされることを防いでいる(図1)。…

※「胚珠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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