改訂新版 世界大百科事典 「ハヌマット」の意味・わかりやすい解説
ハヌマット
Hanumat
ヒンドゥー教における神猿の名。〈ハヌマーンHanumān〉の名でも知られる。風神バーユと天女アンジャナーAñjanāの息子とみなされる。叙事詩《ラーマーヤナ》の主要な登場人物であり,ラーマ王子を支援して,南海の都市ランカーの王であるラーバナと戦い,不死身の活躍をする。ラーマは,ラーバナに誘拐されたシーター妃を救うために,猿の軍勢とともにランカー市を攻撃する。その際,ハヌマットはシーターのようすを探るため,海を飛んでラーバナの宮殿に入ってシーターに会うが,捕らえられ,尾に火をつけられて街路を歩かされる。しかし,彼はかえってランカー市を燃やしてラーマのもとに帰還する。そのほかにも彼の怪力を示すエピソードは多い。たとえば,ラーマが戦場において失神したとき,彼はヒマラヤ山中へ飛び,薬草のある山を引き抜いて運んで来て,ラーマを蘇生させる。ハヌマットは《西遊記》の孫悟空のモデルであるという説もあるが,彼も広く民衆に愛され,崇拝され続けている。彼が曲芸師やレスラーの守護神であるということも興味深い。
執筆者:上村 勝彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報