孫悟空(読み)そんごくう

精選版 日本国語大辞典 「孫悟空」の意味・読み・例文・類語

そん‐ごくう【孫悟空】

中国、明代の通俗小説西遊記」の主人公。猿身で、石から生まれ、七二般変化の神通力を持ち、天上界で大暴れするが、如来により五行山下に閉じ込められる。五〇〇年後、唐僧玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)に救い出され、猪八戒(ちょはっかい)沙悟浄(さごじょう)とともに玄奘に従い、苦難をともにして天竺(インド)に行き、経文を得る。インド古代叙事詩「ラーマーヤナ」の英雄ハヌマットをモデルにしたものともいう。

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デジタル大辞泉 「孫悟空」の意味・読み・例文・類語

そん‐ごくう【孫悟空】

中国の長編小説西遊記」に登場する怪猿。石から生まれ、変化の術と觔斗雲きんとうんの術とを修得して天宮を騒がせ、如来によってとりおさえられる。のち、天竺てんじくに経文を取りにいく玄奘げんじょう三蔵さんぞうに助け出され、猪八戒ちょはっかい沙悟浄さごじょうとともに道中の81難から玄奘を守り、目的を果たす。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「孫悟空」の意味・わかりやすい解説

孫悟空
そんごくう

中国、明(みん)代の長編小説『西遊記』の主人公。花果山(かかざん)の仙石から生まれた石猿の悟空は、変化(へんげ)の術を身につけ、自由自在に伸び縮みする如意棒(にょいぼう)を振るい天宮を騒がすが、如来(にょらい)によって五行山下に取り押さえられる。三蔵法師玄奘(げんじょう)の従者となることで救い出された悟空は、猪八戒(ちょはっかい)、沙悟浄(さごじょう)とともに九九八十一難(くくはちじゅういちなん)から法師を守り無事取経の目的を果たす。玄奘の取経旅行は唐代にすでに伝説化されるが、悟空は南宋(なんそう)の『大唐三蔵取経詩話』のなかに猴行者(こうぎょうじゃ)として初めて登場する。その後の物語の成長発展に伴い、悟空は縦横無尽の活躍をするようになる。悟空の起源については種々の説があり、仏典に、あるいは中国の古い説話のなかに、あるいはインドの『ラーマーヤナ』に起源を求めるが、まだ確定的な説はない。この人・猿・神の三性を兼ね備えた悟空は勇猛果敢に妖怪(ようかい)どもと闘うが、単純・短気で、おだてにものりやすい。底抜けに明るい悟空の野性味は、倫理の枠を超えて読者に強く迫り、優柔不断な三蔵法師にかわり完全に主人公化している。

[桜井幸江]

『中野美代子著『孫悟空の誕生――サルの民話学と「西遊記」』(1980・玉川大学出版部)』

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改訂新版 世界大百科事典 「孫悟空」の意味・わかりやすい解説

孫悟空 (そんごくう)
Sūn Wù kòng

中国の小説《西遊記》に登場する猿の名。花果山の石から生まれ水簾洞で美猴王と称し,やがて仙人より72般の仙術を教わって神通力を身につけ,孫悟空の名を与えられる。次いで斉天大聖と名のって竜宮,地府,天界を荒らしまわったあげく,釈迦如来によって五行山の岩に閉じこめられ,母の胎内たる石の中で再生を期す。500年後にここを通りかかった玄奘(げんじよう)に助けられ,その弟子として猪八戒(ちよはつかい),沙悟浄(さごじよう)とともに西天取経の旅に出,妖怪どもを退治しつつめでたく目的を達し,その功績で闘戦勝仏となる。この孫悟空のイメージの形成にあたっては,漢以降の猿の民話数種をはじめ,仏典に見える猿,インドの古代叙事詩《ラーマーヤナ》に登場する猿のハヌマットなどのイメージが混然と絡みあっているほか,竜がそなえる神通力も影響を与えたと思われるが,まだ多くの謎が解明を待っている。しかし京劇,劇画,アニメ等における人気は当代随一といえよう。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「孫悟空」の意味・わかりやすい解説

孫悟空
そんごくう
Sun Wu-kong

中国,明の小説『西遊記』の主人公。仙石から生れた神通力をもつ猿。天界を騒がせた罪で五行山下に閉じ込められていたが,のち天竺に取経に行く三蔵法師に助けられ,法師の従者となり,猪八戒 (ちょはっかい) ,沙悟浄 (しゃごじょう) とともに三蔵をさまざまな危難から守る。史実であった唐の玄奘 (げんじょう。三蔵法師) の取経旅行は唐末にはすでに伝説化し,宋代には講談の題材となった。架空の従者孫悟空の原型は南宋末の書とみられる『大唐三蔵取経詩話』に猴行者 (こうぎょうじゃ) の名で登場し,その後の物語の発展過程で徐々に重要人物化していった。『西遊記』では,生一本でおだてに乗りやすい底抜けに明るい性格に描かれ,縦横の活躍をし,元来主人公であるはずの三蔵法師の影を薄くしている。

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百科事典マイペディア 「孫悟空」の意味・わかりやすい解説

孫悟空【そんごくう】

中国,明代の小説《西遊(さいゆう)記》の主人公。孫行者とも。花果山の仙石から生まれた妖猿。神通力をもち,反骨精神が盛ん。天宮を騒がして,釈迦如来により五行山に幽閉される。のち猪八戒(ちょはっかい)らと玄奘(げんじょう)に随行,西方,天竺(てんじく)への取経の旅で大活躍する。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「孫悟空」の解説

孫悟空
(通称)
そんごくう

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
五天竺
初演
明治2.7(大阪・天満芝居)

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世界大百科事典(旧版)内の孫悟空の言及

【西遊記】より

…また,同じ主題による戯曲も金・元代に作られていたが,現存するのは明初の楊景賢(楊景言とも伝えられる)の《西遊記雑劇》のみである。 こうして,明刊本《西遊記》へと集大成されていったが,物語発展の過程で,実質的な主人公は,玄奘から孫悟空へと移し変えられていった。現存する明刊本の構成は,(1)孫悟空の生い立ちと〈大閙天宮(だいどうてんぐう)(大いに天宮をさわがす)〉故事(第1~7回),(2)観音による取経者さがし(第8回),(3)玄奘の生い立ち(第9回),(4)唐太宗の地獄めぐり(第10~12回),(5)西天取経の旅(第13~100回)となっている。…

【サル(猿)】より

…宋代ころからは猿の神秘性はうすれ,代わって猴をめぐる話が優勢となる。小説《西遊記》に登場するサル孫悟空は,宋代以降にわかに優勢になった猴の代表者であるが,そのイメージには,猿をめぐる伝承も,また遠くインドのハヌマットの要素も,ともに揺曳(ようえい)している。中国の奥地の山中にすむシシバナザル(金糸猴,仰鼻猴)も,その美しい金毛や特異な容貌(青い顔とあおむきの鼻孔)のゆえに多くの伝説をもっているし,野人,野女と呼ばれる猿も,今日まで話題を提供し続けている。…

【手】より

…巨人症などでは手も大きく,すでに松浦静山《甲子(かつし)夜話》には手首より中指先まで約29cmある身長7尺3寸(約2m20cm)の釈迦嶽(しやかがたけ)という力士の手形の話がある。釈迦が手を自在に大きくした話は《西遊記》にあり,孫悟空がひと跳び10万8000里をいく觔斗雲(きんとうん)を駆って,いかに飛んでも釈迦の手掌から出られなかった。仏の手には不思議が多く,阿弥陀如来の手掌には1000本の車の輻(や)がすじとなって交差し,その放つ光は金の水となって畜生を畏怖(いふ)させる。…

【ハヌマット】より

…たとえば,ラーマが戦場において失神したとき,彼はヒマラヤ山中へ飛び,薬草のある山を引き抜いて運んで来て,ラーマを蘇生させる。ハヌマットは《西遊記》の孫悟空のモデルであるという説もあるが,彼も広く民衆に愛され,崇拝され続けている。彼が曲芸師やレスラーの守護神であるということも興味深い。…

※「孫悟空」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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