ラーマ(読み)らーま(英語表記)Rama Ⅰ Chaophraya Chakri

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラーマ」の意味・わかりやすい解説

ラーマ(5世)
らーま
Rama V Chulalongkorn
(1853―1910)

タイバンコク朝第5代の王(在位1868~1910)。タイ国近代化の最大の功労者としてチュラロンコーン大帝とよばれて全国民に敬愛されている。摂政期間中、即位後、アジア各地を巡幸して、ヨーロッパ諸国の植民地統治の実状を視察し、近代国家実態を学んだ。1873年成年に達すると、ただちに行政改革に着手したが、旧勢力に阻まれて挫折(ざせつ)、時機の到来を待った。1892年、初めて近代的な内閣制度を発足させた。その後、有能な王弟ダムロンDamrongの協力により内政の整備に努め、外に向かっては柔軟な外交政策によって外圧を防いだため、イギリス・フランス両植民地勢力に挟まれながらも、ついにその政治的独立を全うすることができた。

石井米雄


ラーマ(4世)
らーま
Rama Ⅳ Mongkut
(1804―1868)

タイのバンコク朝第4代の王(在位1851~68)。チョムクラウ王が正しいが、幼名にちなんでモンクット王と通称する。父王ラーマ2世の死後王位異母兄(ラーマ3世)に譲って僧籍に入り、27年間僧侶(そうりょ)生活を送った。その間、積極的に外国人と交際して意欲的に欧米先進文明の摂取に努め、開明的エリートの中心的存在となった。出家中、復古的仏教改革運動であるタマユット派をおこした。王位につくと、それまでの閉鎖的対外政策を改め、1855年イギリスとの間に「ボーリング条約」を締結したのを手始めに、西洋列強と次々に通商条約を締結して門戸を開いた。5世王チュラロンコーンの家庭教師としてイギリス婦人レオノーウェンスA. H. Leonowensを招聘(しょうへい)した。彼女の自伝『シャム宮廷のイギリス人教師』(1870)などに基づいてミュージカル『王様と私』が脚色された。

[石井米雄]


ラーマ(1世)
らーま
Rama Ⅰ Chaophraya Chakri
(1736―1809)

タイのバンコク朝(チャクリ朝ラタナコーシン朝)の創設者(在位1782~1809)。1782年精神錯乱に陥ったタークシンの後を受けてタイ国王に推挙されると、王宮をトンブリー対岸に移し、ここに新都を建設して、クルンテープ(通称バンコク)と名づけた。アユタヤ朝の繁栄の再興を目ざした王は、まず国民の精神的統合の中核を仏教に求め、経律の「結集(けつじゅう)」によって弛緩(しかん)した仏教サンガの規律を確立し、乱れていた法制の再建を図るため『三印法典』を制定して国内秩序回復の基礎を置いた。王はまた盛んに文芸を奨励した。『ラーマキエン』『イナオ』『サームコック(三国志)』などはこの時代の作品である。

[石井米雄]

『L・サヤマナン著、二村龍男訳『タイの歴史』(1978・近藤出版社)』


ラーマ(7世)
らーま
Rama Ⅶ Prajadhipok
(1893―1941)

タイのバンコク朝第7代の王(在位1925~1935)。ラーマ5世の王子、ラーマ6世の弟にあたる。イギリスのイートン校で自由主義を学び、フランスで近代軍事教育を受けて1924年帰国。即位後は、絶対君主政治を改革して立憲君主政治を実現しようと努めたが、王族重臣の抵抗を受けて失敗した。1932年6月には西欧留学経験者たちが指導した立憲革命を承認し、立憲君主政治を推進しようと望んだが、革命政権の議会政治権力の把握、王党派の失脚、王権の衰退などに失望し、1934年イギリスへ移住した。同国で1935年退位を宣言し、1941年客死した。

[市川健二郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラーマ」の意味・わかりやすい解説

ラーマ
Rāma

インドの大叙事詩『ラーマーヤナ』の主人公。ビシュヌ神の第7の化身として広くインドから東南アジアにわたって崇拝されている。コーサラ国の都アヨーディヤーの王ダシャラタの長子として生れ,ジャナカ王の娘シーターを妻とする。讒言によりシーターと弟ラクシュマナを伴って 14年間の放浪の旅をするはめに陥り,魔王ラーバナにシーターを奪われるが,猿軍の援助を得て激戦の末ラーバナを倒し,シーターを取戻し,アヨーディヤーの王位につく。彼とシーターとの波乱万丈の生涯は古代インドの美的,倫理的理想にあふれ,2人は王族 (クシャトリヤ ) の理想的人格として今日にいたるまでインド民衆の熱狂的尊敬を受けてきた。

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