日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハマベブドウ」の意味・わかりやすい解説
ハマベブドウ
はまべぶどう
sea grape
[学] Coccoloba uvifera (L.) L.
タデ科(APG分類:タデ科)の小高木。ウミブドウともいう。熱帯アメリカ、西インド諸島原産の果樹。高さ数メートルで、枝ばりがよく、葉は互生し、下部に鞘(さや)状の托葉(たくよう)をもつ短い柄があり、広腎臓(じんぞう)形で長さ10センチメートル、幅16センチメートル、革質で光沢があり、主脈基部は赤色を帯びる。花は枝端または葉腋(ようえき)につく長さ20センチメートルの総状花序につき、白色5弁で径3ミリメートル、芳香がある。果実は径2センチメートル、ほぼ球形、1果房に数果ないし30余果をつける。熟果は暗赤紫色で、酸味が強く、生食のほかゼリーにしたり、アルコール飲料もつくる。材は堅く紫褐色で、水に入れて熱すると鮮赤色となる。家具に用い、樹皮はタンニンを含み、皮なめしに用いる。樹皮や葉を煮出してキノーkinoをつくり、収斂(しゅうれん)剤として下痢止めに用いる。また、樹皮を煮出すと黒い液がとれ、インキに用いた。
[飯塚宗夫 2020年12月11日]