日本大百科全書(ニッポニカ) 「バイエ」の意味・わかりやすい解説
バイエ
ばいえ
Raymond Bayer
(1898―1959)
フランスの美学者、哲学者。パリに生まれる。パリ大学でV・バッシュに学んで美学を志し、1942年から死ぬまでの間、パリ大学教授を務めた。美学における客観性を追求するその学風は、学位論文『優美の美学』L'Esthétique de la grâce(1934)においてすでに開花し、動物の走る姿を高速写真で分解するような方法を試みた。とくに芸術作品を対象とする場合には、美が作者の手仕事の結果でしかありえないということを強調し、この事実と、この事実に即して作品の内部の精神的現実に接近する方法とをさして、「制作のレアリスム」とよんだ。ほかに『美学概論』Traité d'esthétique(1956)、『美学史』Histoire d'esthétique(1961)などがある。
[佐々木健一 2015年5月19日]