改訂新版 世界大百科事典 「バウツ」の意味・わかりやすい解説
バウツ
Dieric(Dirc, Dirk) Bouts
生没年:1420ころ-75
ネーデルラントの画家。ハールレムに生まれ,1448年ころからルーバンに移り住み,同地で生涯を終えた。ロヒール・ファン・デル・ウェイデンとヤン・ファン・アイクの影響を時期を異にして強く受け,さらに北部ネーデルラント出身者特有の鋭い写実感覚を加えて独自の静謐な画風を創造した。後期の代表作《聖餐の祭壇画》の中央パネル〈最後の晩餐〉には,北方画家としてはひじょうに精度の高い線的遠近法が用いられており,細密な室内描写や細やかな光の表現が動きの少ない人物を力強く浮かび上がらせている。ルーバン市庁舎を飾るための《オットー大帝の裁判》の2連画は画家の死によって未完に終わった。息子のアルブレヒトAlbrecht B.(1452ころ-1549)も画家として活躍した。
執筆者:荒木 成子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報