改訂新版 世界大百科事典 「バシール2世」の意味・わかりやすい解説
バシール[2世]
Bashīr Ⅱ
生没年:1767-1851
レバノン山間部のドルーズ派名望家シハーブShihāb家から出た政治指導者。1788年に,レバノンの名望家たちからアミールに選ばれ,軍事・政略にすぐれたうえに財政にも明るく,その政治的手腕をもって,今日の〈大レバノン〉の基礎を築いた。オスマン・トルコ政府と結んでナポレオン軍の侵略をかわし,エジプトのムハンマド・アリーのシリア侵入の際もレバノンの政治的独立を維持した。ドルーズ派イスラムからキリスト教のマロン派に改宗してキリスト教徒との融和をすすめ,マロン派をレバノンの国民的宗教とするのに功績があった。その一族の威信は今日なお非常に高く,彼の遺骨の葬られているシハーブ家の館バイト・アッディーンは昔日の栄華をしのばせる。
執筆者:林 武
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