日本大百科全書(ニッポニカ) 「バールー‐シューバール」の意味・わかりやすい解説
バールー‐シューバール
ばーるーしゅーばーる
Wahlöö Sjöwall
スウェーデンの推理小説家。ペール・バールーPer Wahlöö(1926―1975)、マイ・シューバールMaj Sjöwall(1935―2020)の夫妻共作コンビ名。ペール・バールーは、イョーテボリ生まれ。ルンドの高校を卒業後、新聞、雑誌社に勤務。妻のマイ・シューバールはストックホルム生まれ。ジャーナリズムとグラフィックの専門学校を卒業後、新聞、雑誌社に勤務。1962年に2人は結婚し小説の合作を始める。1965年、スウェーデンの首都ストックホルムを舞台に、市警殺人課刑事マルティン・ベックMartin Beckを主人公にした警察捜査小説『ロゼアンナ』を発表。以後、人気シリーズとして年1作ずつ書き続けられた。錯綜(さくそう)する事件を捜査していく警察の活動がリアルに物語られているばかりか、シリーズを通してスウェーデンの風俗や政治・社会情勢の移り変わりなども描かれており、世界各国語に訳され高い評価と人気を得た。第四作『笑う警官』(1968)でMWA(アメリカ探偵作家クラブ)長編賞を受賞した。1975年に夫のペール・バールーが亡くなったため、第十作目にあたる『テロリスト』(1975)でシリーズは幕を閉じた。バールー個人の作品には、ほかにペーター・ジェンセン警部を主人公にした犯罪小説が5作ある。マイ・シューバールは1990年にオランダの推理作家協会会長のトーマス・ロスTomas Ross(1944― )との合作で『グレタ・ガルボに似た女』を発表した。
[吉野 仁]
『高見浩訳『ロゼアンナ』『笑う警官』『消えた消防車』『密室』『テロリスト』(角川文庫)』▽『マイ・シューヴァル、トーマス・ロス著、木村由利子訳『グレタ・ガルボに似た女』(角川文庫)』