改訂新版 世界大百科事典 「パキエ」の意味・わかりやすい解説
パキエ
Estienne Pasquier
生没年:1529-1615
フランスの歴史家,法律家。フランスやイタリアの大学でおもに宗教改革派寄りの教授から法学を学び,1549年パリ高等法院付き弁護士となり,大きな訴訟事件における弁論により名声を確立。その一方,早くから歴史や文学に強い関心を抱いて資料を収集,またロンサールらの詩人や作家と親交を結んで,自らも詩や散文作品を試みた。宗教戦争期の法曹人として自らはカトリック信仰のうちにとどまりながらも,広い視野に立って信仰の自由を説き平和と寛容を訴えた。《国王諮問会議の諸侯に訴える》(1561,匿名出版)は,カステリヨンの著作とともに寛容思想史上画期的なもの。主著《フランス考》(1560-1621)は政治,法制,言語,文学,習俗など広範な領域にわたり,豊富な史料を駆使した歴史研究として近代最初のものであり,また膨大なその《書簡集》はすぐれた文明批評家の証言として文学的にも資料的にもきわめて貴重なものである。
執筆者:二宮 敬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報