カステリヨン(英語表記)Sébastien Castellion

改訂新版 世界大百科事典 「カステリヨン」の意味・わかりやすい解説

カステリヨン
Sébastien Castellion
生没年:1515-63

フランスの神学者寛容思想家。宗教改革思想を抱いてジュネーブカルバンのもとに身を寄せ,その創立にかかる高等学院(アカデミー)で古典語と聖書の教育に当たったが,旧約《雅歌》の解釈についてカルバンと対立,1544年辞職してより自由なバーゼルに移る。同地大学のギリシア語講師となったが生活は貧窮,またカルバン派の中傷に苦しめられた。その間,聖書・神学研究と並行してわかりやすい仏訳聖書を刊行(1555)したほか,53年カルバンによる異端者セルベトゥス焚刑事件にあたり,古今の文献論拠に世俗権力による異端処刑の非を立証した編著《異端者について》(1554)を発表して寛容論争の口火を切った。62年第1回フランス宗教戦争に際しては,個人の信仰良心は尊厳侵すべからずとする信念から同朋相喰む戦争の愚を説き,平和回復とフランスの国民的統一を祖国に訴える《悩めるフランスに勧める》(1562)を発表した。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カステリヨン」の意味・わかりやすい解説

カステリヨン
かすてりよん
Sébastien Castellion
(1515―1563)

フランスの神学者。ジュネーブに亡命し古典語・聖書の教育に従事したが、聖書解釈についてカルバンと対立、バーゼルに移って苦しく孤独な生を送る。斬新(ざんしん)平易な聖書仏訳のほか、カルバン派の不寛容を批判して世俗権力による異端処刑を否定した『異端者について』(1554)、宗教戦争を否認し個人の信仰と良心の不可侵性を説いた『悩めるフランスに勧めること』(1562)によって、寛容・平和思想の先駆となった。

二宮 敬 2017年11月17日]

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