改訂新版 世界大百科事典 の解説
パンチャースティカーヤサーラ
Pañcāstikāyasāra
ジャイナ教空衣派の著名な学僧クンダクンダKundakunda(2~3世紀ころ)の著した教義綱要書。題名は〈五つの存在の聚(あつまり)についての精要〉の意。原典は俗語で書かれ,合計173(あるいは180)の詩頌より成る。本書は2編に分かれ,第1編は本体論に関し,宇宙の基本的構成要素である霊魂,物質などの五つの存在の聚(アスティカーヤ)を解説し,第2編は教義全体を要約した九つの原理(パダールタ)の説明にあてられる。九つとは,霊魂,非霊魂,流入,束縛,防止,除去,解脱(げだつ)の七つの原理に功徳(プニヤ)と罪悪(パーパ)の二つを加えたものをいう。そして究極的には解脱のための正しい信仰,知識,行為(三つの宝)の実践を説く。ウマースバーティの綱要書が聖典の古説に準拠するのに対し,本書はより進んだ段階を示すが,すぐれた解説書,入門書としてその評価は高い。
執筆者:矢島 道彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報