改訂新版 世界大百科事典 「ウマースバーティ」の意味・わかりやすい解説
ウマースバーティ
Umāsvāti
インド,ジャイナ教の著名な学僧。生没年は不明であるが,だいたい5,6世紀ころの人とみられる。別名ウマースバーミンUmāsvāmin。ジャイナ教教義の綱要書《タットバ・アルタ・アディガマ・スートラ(真理の意味を理解するための経)》の著者として,広くその名を知られる。本書は,その冒頭に〈正しい信仰・知識・行為が解脱(げだつ)への道である〉と述べ,全10章のなかにジャイナ教独自の認識論,宇宙論(世界観),存在論,解脱のための実践論などを順次概説して,業(カルマ)に束縛された霊魂(ジーバjīva)がいかにすれば解脱(モークシャ)を得ることができるかを説き示している。派によってその伝承内容に若干の相違はあるが,本書の重要性は聖典以来のオーソドックスな教義をはじめて体系・組織化したところにあり,その権威はすべてのジャイナ教徒の認めるところである。自注(バーシュヤ)のほか,諸注釈書がのこされている。
執筆者:矢島 道彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報