パン屋(読み)ぱんや

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パン屋」の意味・わかりやすい解説

パン屋
ぱんや

パン麺麭とも書く)を製造・販売する店。1869年(明治2)に木村屋(開業当時は文英堂といった)が東京で始めたのが本格的なパン屋の最初で、74年創製の同店の餡(あん)パンは日本独特のものである。20世紀になると、食パンや日本独自のいろいろな菓子パンがつくられ、それを商うパン屋も増えた。1970年以後はパン製造の機械化が進み大手生産メーカーが現れ、小売りのパン屋に卸すようになった。さらに学校給食や一般のパン食の普及によって、パン製造はいっそう盛んとなった。今日のパン屋には、小規模ながら自家で生産し販売するものと、純然たる小売りのものとがある。明治の初めには宣伝のため街頭振売りによる販売も行われた。19世紀の末、東京では、「西洋各国パン大安売」と胴に書いたドラムをたたき、シルクハット・フロック姿で売っていたという記録が残っている。また、そのころ、屋台店の蜜(みつ)パン売りもいた。蜜パンも日本人の好みに応じてくふうされた新食品であった。

遠藤元男

『仲田定之助著『明治商賣往来』(1968・青蛙房)』

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