食パン(読み)しょくぱん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「食パン」の意味・わかりやすい解説

食パン
しょくぱん

本食(ほんしょく)のパンの略。主食となる四角いパン。第二次世界大戦前のパン職人は食パンを本食とよんでいた。西洋料理の「もと」となる食べ物のパンという意味で、イギリス系の白パンをさしたものである。その昔イギリスは良質コムギの生産地であって、大形の円い直焼(じかや)きパンを焼いていたが、産業革命によってパン製法も合理化が進み、パン型に入れて大量に焼ける連接型焼きパンになった。明治初年日本ではこれを「三斤棒の食パン」とよんだ。この斤はイギリスのポンド(500グラム)である。パン型に生地を3個または6個に分けて入れて焼くので、三つ山、六つ山とよばれ、当初はひと山1ポンドを原則としていたが、市販競争が激しくなってきた大正から昭和にかけて、食パンの型も大、中、小が現れ、ひと山1斤はすでに崩れてしまった。関西では山取引になったが、関東ではひと山270グラム(食糧庁標準パン)まで小さくなっている。

 食パンは、パン生地に配合される糖、脂肪の配合率が10%未満のものと行政上規定されており、10%以上のものは菓子パンとして扱われる。食パンの種類は、生地に仕込む液体が水か乳かによってウォーター・ブレッドとミルク・ブレッドに分かれる。また、生地に使用する糖、油脂牛乳の量によってシンプル、リーン、リッチに分けられる。フランスパン生地で型焼きにしたパンはシンプルな食パンの代表である。糖と油脂の双方とも2%程度の配合率のパンはリーンなパンでトースト向きであり、糖、油脂、脱脂粉乳がそれぞれ4%のリッチなパンはサンドイッチ用、またはそのまま食するのに向く。型はイギリス系では山型と角型とがあり、パン型の蓋(ふた)の有無で決まる。アメリカ系はワンローフ型が多く450グラムを基準としており、イギリス系角型に相当する小形をプルマン型パンとしている。

[阿久津正蔵]

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