日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒラスズキ」の意味・わかりやすい解説
ヒラスズキ
ひらすずき / 平鱸
blackfin seabass
[学] Lateolabrax latus
硬骨魚綱スズキ目スズキ科Lateolabracidaeに属する海水魚。科の分類についてはハタ科(Serranidae)、パーシクティス科(旧スズキ科。Percichthyidae)、スズキ科(Lateolabracidae)およびモロネ科(Moronidae)など諸説があり、まだ定説はないが、カナダの魚類学者ネルソンJoseph S. Nelson(1937―2011)らによるもっとも新しい分類体系(2016)に従っている。日本海側では石川県能登(のと)半島、兵庫県浜坂(はまさか)地区、島根県、山口県を経て九州南岸、太平洋側では茨城県から種子島(たねがしま)まで、および朝鮮半島南岸に分布する。スズキよりも暖海性で、外海に面した浅海の岩礁域に生息する。産卵期は2~3月といわれているがはっきりとしていない。スズキの幼魚は川に上るが、ヒラスズキは河口域にきても川に上らない。全長94センチメートルほどに達する。荒磯(あらいそ)でのルアーフィッシングの好対象魚で、スズキよりも引きが強いので喜ばれる。釣り人はヒラスズキをヒラ、スズキをマルとよぶ。スズキと同じように食されるが、刺身や洗いにすると身がしまっていて、スズキよりおいしいといわれている。
スズキやタイリクスズキに似ているが、ヒラスズキは体高や尾柄(びへい)高が高く、背びれ軟条は多くて15~16本で、かならず下顎(かがく)の腹面に1列の鱗(うろこ)があるなどの特徴で他の2種と区別できる。
[片山正夫・尼岡邦夫 2020年6月23日]