日本大百科全書(ニッポニカ) 「タイリクスズキ」の意味・わかりやすい解説
タイリクスズキ
たいりくすずき / 大陸鱸
[学] Lateolabrax sp.
硬骨魚綱スズキ目スズキ科に属する海水魚。渤海(ぼっかい)、黄海、東シナ海など中国大陸の沿岸域や南シナ海北部に分布する。スズキによく似るが、吻(ふん)は短くて丸く、目がいくぶん前に位置する。体の背側に鱗径(りんけい)よりも大きく明瞭(めいりょう)な黒斑(こくはん)があり、側線より下方にも認められる。黒斑は成魚になっても消えない。稚魚には体の背側面に3本の暗色帯があるが、黒斑はみられない。本種は日本産のスズキと同種にされていたが、成魚になっても黒斑が消えない変異として扱われていた。しかし研究の結果、別種になった。東シナ海で漁獲され、長崎や下関(しものせき)に水揚げされることがある。また、スズキよりも成長が早いので、中国から種苗として輸入し、静岡県、香川県、愛媛県、宮崎県、石川県、福井県などでヒラスズキ(別種のヒラスズキではない)とよんで養殖している。生け簀(す)から逃げ出したものがルアーで釣れることがあるが、黒斑があることから、釣り人はこれをホシスズキとよんでいる。最近、日本海、中部や関東地方の沿岸からも報告されている。日本在来種のスズキやヒラスズキと交雑する可能性があり、遺伝的攪乱(かくらん)に注意する必要がある。中国大陸では沿岸の浅海域、河口域、汽水域に生息し、ときには淡水域に侵入する。冬期には沖合いの深所で越冬する。魚類や甲殻類を食べる。産卵期は渤海や黄海では9~11月。1年で体長約25~30センチメートルに成長し、最大体長は1メートルほどになる。中国では延縄(はえなわ)、手釣り、底引網などで漁獲されている。日本ではスズキと同じように利用される。
本種はスズキとは体側に鱗(うろこ)より大きい黒斑があること、吻が短くて、とがらないことなどで、ヒラスズキとは背びれ軟条が12~14本であること、尾柄(びへい)が細長いことなどで区別できる。
[尼岡邦夫 2022年7月21日]