ビブリアパウペルム(英語表記)Biblia pauperum

改訂新版 世界大百科事典 「ビブリアパウペルム」の意味・わかりやすい解説

ビブリア・パウペルム
Biblia pauperum

聖書に題材をとった中世の版画集。〈貧者の聖書〉の意。文盲者用に作られ,最古のものは13世紀中葉のエドモン・ド・ロチルド所蔵のものと言われるが,この名称は後年に与えられた。1460年ころ,おそらくフランスで,テキストとともに図版木版で刷られて普及し,15~16世紀を通じて芸術家たちの主要な着想源(タピスリーの下図など)になった。キリスト降誕から幼年時代を経てキリストの再臨,すなわち〈最後の審判〉に至るまで,各場面の図像旧約聖書史実と関連づけられた寓意的表現をとっている。1903年ポール・ハイツがストラスブールで出版した同名の書物が,木版刷の初版本の原形をとどめていると言われる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ビブリアパウペルム」の意味・わかりやすい解説

ビブリア・パウペルム
Biblia Pauperum

「貧しき者の聖書」の意で,13世紀前半におそらく南ドイツ地方で作られ,14~15世紀にかけて数多くの挿絵入り写本が作られた一種の釈義的聖書。その特色は,30あまりのイエス生涯の主たる場面の周囲に,それの予表となった旧約聖書の場面,預言者像などを配置した,いわゆる類型論 Typology的図像にある。挿絵は彩色に乏しいが,素朴な美しさに富んでいる。通説にこれを文盲者のために作られたものとするが,確かではなく,むしろ「貧しき者」を標榜した特殊な信仰運動に関連させる説がある。

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