日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビリディアナ」の意味・わかりやすい解説
ビリディアナ
びりでぃあな
Viridiana
スペイン映画。1961年作品。母国スペインの内戦を機にメキシコに渡り、商業映画監督として活動していたルイス・ブニュエルが、24年ぶりに故国に帰って撮った作品。修道院の見習い尼だったビリディアナ(シルビア・ピナルSilvia Pinal、1931― )は、叔父が広大な邸宅を遺して自殺したため還俗する。邸宅を救済の家にしようと、街の乞食(こじき)たちを集め、神の教えを実践していこうとするのだが……。信教とブルジョワ社会のせめぎあいを通し、信仰の危うさに容赦なく迫る展開や、乞食たちがレオナルド・ダ・ビンチの「最後の晩餐(ばんさん)」の構図どおりにポーズをとるシーンなど、毒気に満ちた内容のため、1961年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞しながらも、バチカンから冒涜(ぼうとく)的な内容と激しい批判が出た。それを受けてフランコ政権は、この作品がスペイン映画であることを取り消し、スペインではフランコ死後の1977年まで、上映禁止処分が解かれなかった。
[出口丈人]