ファブレス(読み)ふぁぶれす(英語表記)fabless

翻訳|fabless

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ファブレス」の意味・わかりやすい解説

ファブレス
ふぁぶれす
fabless

メーカーでありながら製造部門をもたない経営形態。英語のfab(fabrication facility、製造施設)とless(ない)を組み合わせた造語である。企画、設計、開発、販売のみに専念し、製造、組立てのすべてを外部のメーカーにゆだねる経営形態をとる。こうしたビジネスモデルをファブレス経営とよび、この形態をとる企業をファブレス企業という。企画、開発、設計、デザインこそが高い付加価値を生み出すという発想に基づき、1980年代後半にアメリカのシリコンバレーの半導体関連企業が日本企業へ生産を委託したことが起源とされる。世界のファブレス企業では、IT(情報技術)機器のアップルやスポーツ用品のナイキなどが著名で、日本でも任天堂セガキーエンスダイドードリンコなどの、玩具・ゲーム、電子・電機飲料ほか、アパレル分野においても次々と生まれている。ファブレスが生産を委託するのは、受託専門のファウンドリfoundryとよばれる企業のほか、普通のメーカーに任せる場合もある。生産委託先としては、生産コストの安いアジアの企業を選ぶケースが増えている。製造部門だけでなく、販売・流通部門なども外部委託する事例が多い。

 ファブレスは、製造設備や生産人員を保有せずにすみ、経営資源を研究開発や製品企画などに集中でき、高い利益率をあげやすいという特徴がある。また、製造部門をもたないため、迅速で機動的な経営方針の変更が可能で、急激な経営環境の変化にも対応しやすい利点がある。このため資金力の乏しい中小・ベンチャー企業に適した経営手法とされる。一方、製造技術やノウハウを盗まれるリスクがあるほか、開発者に生産工程に関する知識が根づかないといった欠点がある。また、製造を外部に委託するため、品質納期の管理がむずかしいといった問題点もある。

[矢野 武 2016年6月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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