改訂新版 世界大百科事典 「経営資源」の意味・わかりやすい解説
経営資源 (けいえいしげん)
managerial resources
企業が成長するためには,資本や労働者をより多く必要とする。同様に,成長してより大きくなった企業を経営するには,より多くの経営能力を必要とする。この能力は,資金調達力や販売力,従業員管理能力や経営管理についての知識と経験など,もろもろの力の集合体である。イギリスの経済学者ペンローズEdith Tilton Penrose(1914-96)は,1959年刊行の著書で,これを経営資源と呼んだ。彼によると,企業の成長にやがて限界がくるのは,物理的制約からではなく,この経営資源が相対的に不足するようになるからだ,という。たとえば今,二つの企業があって,機械設備が互いに同質・同量の工場で,同量の原料を使い,同数の従業員によって生産したとする。そのとき,もし両企業の間で生産量に差が出たとしたら,なにが原因だったのであろうか。それは,この二つの企業の管理能力の差から生まれたものと考えられる。この能力こそ経営資源と呼ばれるものである。
その経営資源のなかで最も具体的なものは,経営者そのものであるが,企業が成長するためには,その経営者の育成も含めて,経営資源の開発に努めなければならない。逆に,もし現在の活動のレベルが必要とする以上に,経営資源の内部蓄積が進んだとすると,企業はその余剰資源をなにか他の用途にあてるか,あるいは他の場所や国に移動させて,より有効な利用を図ることだろう。余っている場合でなくとも,現在の使いみちよりも良い使いみち,すなわち,より大きな利益をあげる使いみちがみつかったら,企業は現在の使用を停止して,その新しい使いみちに経営資源を移動させることであろう。この経営資源の移動という概念は1970年代以後,国際資本移動を論ずる際に,その資本移動に伴って経営資源も移動するので,とくに日本の経済学者たちによって大きく扱われるようになった。
執筆者:佐々木 尚人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報