翻訳|quality
品質とは一般的に、使用目的に応じた商品の有用な自然的属性(物理的および化学的諸性質)に基づいた実質的性能や消費に役だつ一定の機能を意味している。原材料を加工して商品を生産するとき、商品の価値面は、価値(交換価値。価値の大きさが抽象的で、現象面は価格で表される)と使用価値(価値の大きさが具体的で、主として目で判断でき、現象面は品質で表される)の二つが創造され、この両者が統一されて商品価値が形成される。
商品の生産過程で人間の労働が加えられる場合、抽象的な人間労働(労働時間、保管、運搬など商品を見ただけではわからない労働)を加えることによって価値は大きくなり、また具体的な人間労働(商品を見ることによって質的な加工が判断できる労働)によって使用価値も同時に付加されて、品質の適否や優劣が示されることとなる。
使用価値は通常、市場において当該商品に関する完全知識を有する不特定多数の消費者によって評価を受けた結果、購入意欲や購入意思が示されたとき、すなわち流通されることの意義が認められる判定がなされたとき、初めて品質として成立する。したがって、使用価値をもつものがすべて品質として成立するわけではなく、たとえば性能的に使われなくなった旧式の電化製品や流行遅れの衣料品などを製品化して市場に出荷したとしても、消費者の大方の判断は購入することを拒否する。このことは、使用価値があってもかならずしも品質として成立しないことを意味している。このように商品の使用価値が品質として成立するためには、消費に役だつ単純な自然的属性や実質的な有用性のみではなく、市場における適商性(商品として販売される場合の適性)を具備していることが必須(ひっす)の条件となる。前者のような自然的属性に基づく品質を第一次品質(または自然的品質)、後者のような市場適性に基づく品質を第二次品質(または社会的品質)とよんでいる。
第一次品質は、比重、強度、硬度、伸度、繊度、粘度、抗張力、融点、沸点、凝固点、引火点、水分率、組織などの物理的性質と、成分、組成、試薬に対する反応などの化学的性質によって測定される商品の基本的な品質であり、環境や資源問題に対する性能も、第一次品質を構成する要素となる。これに対し第二次品質は、商標、商品名、デザイン、包装、色彩、スタイル、ファッションなど社会的・市場的要素と、色沢、香り、味、音調、感触など官能的・心理的要素から成り立っている。
第一次品質は、当該商品の使用目的に応じた機能と性能を示す重要な品質で、物質を商品として成立させるための前提であり、品質を狭義に解した場合の概念である。生産財商品の品質はまさにこれが中心である。第二次品質は、商品の使用目的には実質的に寄与するものではないが、商品を装飾して魅力や美しさを付与するとともに、消費生活に快適性や満足感をもたらすと同時に、消費者の購買意欲を増進し、商品の販売促進にも大きく寄与している。この意味で第二次品質は、第一次品質を基盤として副次的な効果をもつものといえる。しかし機械商品が電子化あるいはデジタル化されるなど技術が高度化し、商品の使用価値の判定が消費者の有している知識では事実上不可能となったこと、セルフサービス方式による販売が拡大して商品がプリパッケージ(販売前に包装すること)化されたため、判断そのものが購入時点では行いえない状態になっていることから、第二次品質は商品価値の形成のうえでは主導的な役割を果たすこととなった。したがって第二次品質は商品の品質の欠陥性を粉飾する作用を有することも注目しなければならない。
また、商品の社会的評価や社会的イメージを第三次品質とする考え方もある。
[青木弘明・大竹英雄]
『橋本仁蔵他著『品質基礎理論』(1966・税務経理協会)』▽『島田記史雄・飯島義郎編『商品学講義』(1972・青林書院新社)』▽『水野良象著『商品学読本』(1987・東洋経済新報社)』▽『石崎悦史著『商品学と商品戦略』(1993・白桃書房)』▽『関義雄・馬淵キノエ著『豊かな社会の商品学』(1998・大学教育出版)』
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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