改訂新版 世界大百科事典 「ファルー法」の意味・わかりやすい解説
ファルー法 (ファルーほう)
Loi Falloux
1850年3月,第二共和政下のフランスで成立した教育制度に関する法令。当時の文相ファルーFrédéric Albert,comte de Falloux(1811-86)にちなんで名付けられたものである。二月革命後の臨時政府の文相カルノーが,憲法制定議会に提出した教育法案では,初等教育の義務・世俗・無償の原則が掲げられていたため,これまで教育管理に強い力をもっていた地方名望家層や聖職者はこれに危機感をもつようになった。保守派と教会はともに共和主義との対決を強めつつ,大学による教育管理の独占の排除,宗教勢力の教育参加を目ざして動きはじめた。この情勢のもとでファルーは議会に法令を提出し,教育に対する教会の発言権を強化した。この結果,学校教育を管理する大学区評議会や新設の公教育高等評議会に司教が参加することになり,司祭が小学校の視学官に加わることにもなった。また個人による私立学校の設立や,宗教関係者の学校経営が容易になったことも注目される。
執筆者:喜安 朗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報