改訂新版 世界大百科事典 「ファンルール」の意味・わかりやすい解説
ファン・ルール
Jacob C.van Leur
生没年:1908-42
オランダのインドネシア社会史研究者。ユトレヒトに生まれ,ライデン大学でインド学を修め,1934年に学位論文〈昔のアジア貿易に関する二,三の考察〉により法学博士号を得た。続いてインドネシアに行き,植民地政庁の内務局,総務局などに勤務しながら多くの論文を発表した。第2次大戦が勃発すると志願して海兵隊に入り,日本軍のジャワ上陸に先立つ海戦において,乗艦とともに撃沈されて34歳の生涯を終えた。
彼は従来のオランダ学界に支配的であったヨーロッパ中心の歴史観を排し,アジア,アフリカ海域の貿易はすでにヨーロッパ諸勢力の進出以前からめざましい発達を遂げていたことを,綿密な研究によって実証した。遺稿の主要部分は英訳されて55年に《インドネシアの貿易と社会》として刊行された。戦後のインドネシア史研究の発達は彼の問題提起に負うところが大きい。
執筆者:永積 昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報