上陸作戦を主任務とする軍種。もっとも強力なのがアメリカの海兵隊U. S. Marine Corpsである。アメリカでは海軍と並んで海軍省の構成部隊となっており、兵力は約17万人。3個海兵師団、3個海兵航空団が、海軍の揚陸作戦部隊と協同して国外への兵力投入態勢をとっている。このうち第3海兵師団と第1海兵航空団は沖縄と岩国(山口県)に駐留している。また常時海上に配備されている部隊があり、西太平洋、インド洋では第7艦隊、地中海では第6艦隊の両用戦艦艇に乗艦している。
イギリスの海兵隊は17世紀以来のもので、長い伝統をもっている。兵力は約7000人。アルゼンチンとのフォークランド紛争(1982)でも上陸作戦を実施した。植民地の警備にあたっている部隊もある。
アメリカは、このイギリスの経験に学んで海兵隊を編成し、18世紀末以降、遠征作戦を実施してきたわけで、第二次世界大戦では最大47万人の兵力をもって、南太平洋から硫黄(いおう)島、沖縄に至る上陸作戦の主力となった。第二次大戦後では朝鮮戦争における仁川(じんせん)上陸(1950年9月15日)、ベトナム戦争におけるダナン上陸(1965年3月7日)がおもな作戦である。イラン革命によって生じたアメリカ大使館員人質の救出作戦(1980年4月24日、失敗)などにも参加している。また海兵隊には在外公館の警備や海軍の艦内警備の任務も与えられている。
ロシア海軍も海兵隊に相当する海軍歩兵をもっている。旧ソ連では1万8000人が、4個の艦隊司令官の指揮下に連隊編成をとって置かれていた。しかし旧ソ連はアメリカのような大規模な強襲上陸作戦を実施した経験がなく、海軍歩兵は地上軍の主作戦に連携して沿岸地域に対する上陸作戦の第一波として行動するものであった。現在のロシアでは2分の1以下に縮小されている。
このほかにフランス、オランダ、トルコ、スペイン、イラン、南アフリカ、韓国、アルゼンチン、ブラジルなどの諸国も海兵隊を保有している。
[藤井治夫]
海軍兵力で特に陸戦のために編制される部隊。17世紀にイギリス海軍,オランダ海軍が組織したのを最初とし,各国海軍が組織しているが,アメリカ独立戦争中に大陸会議がイギリスの海兵隊にならって組織(1775)し,独立後の1798年正式に創設されたアメリカの海兵隊U.S.Marine Corpsが有名。強力な常備軍をもたなかったアメリカでは,海兵隊は海外派遣の第一部隊として重視され,米西戦争(1898)以降はカリブ海諸国などへのいわゆる砲艦外交の手段となり,第2次大戦では太平洋戦線におけるアメリカ軍反撃の先兵として,ガダルカナル島,硫黄島,沖縄などへの上陸作戦において活動した。アメリカでは海兵隊はアメリカ軍の勇猛果敢さを象徴する部隊とされている。また,在外公館の警備も管轄している。アメリカの海兵隊は国防省の海軍省に属するが,海軍とは別組織である。なお,旧日本海軍の特別陸戦隊,かつてのソ連軍の海軍歩兵morskaya pekhotaは海兵隊に相当する。
執筆者:斎藤 眞
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…一般に軍備は陸・海・空の3軍に大別されるが,海軍の使命,編成,戦略は時代と国家形態に応じて変化した。初期の海軍は水上に乗り出す小武装団にすぎなかったが,今日では,広く水上・水中を活動舞台とする直接の戦闘部隊(艦船,航空機,潜水艦,海兵隊など)のほか,その統率や管理,維持のための組織と施設(官庁,工廠(こうしよう),基地,防備隊,病院,学校など)が含まれる。海軍の使命は元来,国家が必要とする海洋を制して,海を自国のために利用し敵側に利用させないこと,いわゆる制海権の獲得を目標とし,艦艇中心の戦闘部隊として独自に発達してきた。…
…旧日本海軍にあった戦闘部隊。1868年(明治1)から76年まであった常備の海兵隊が前身。その後,艦船の乗員から臨時に陸戦隊が選抜編制され,上陸して居留民の保護,警備や局地的戦闘にあたった。…
※「海兵隊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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