改訂新版 世界大百科事典 「フェナジン」の意味・わかりやすい解説
フェナジン
phenazine
無色(希エチルアルコールを用いて再結晶したもの),または淡黄色(エチルアルコールを用いて再結晶または昇華したもの)の結晶。ジベンゾピラジン,ジベンゾパラジアジン,アゾフェニレン,5,6-ナフトジアジンなどとも呼ばれる。融点171℃。種々の製法があるが,アニリンを赤熱管に通じても得られる。水にはほとんど不溶だが,アルコール,ベンゼンなどにやや溶ける。酸にはよく溶けて黄色ないし赤色溶液となる。フェナジンはアジン染料の骨格として重要である。一般にフェナジン環をもつ染料はアジン染料と総称され,古い歴史をもつが,堅牢度が低いため実用されている品種は少ない。最初の人工染料モーブ(1856年W.H.パーキンによる)も塩基性アジン染料の一つである。このほかニュートラルレッド,アニリンブラックなどがこの型の化合物に属する。
執筆者:竹内 敬人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報