モーブ(読み)もーぶ(英語表記)mauve

翻訳|mauve

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モーブ」の意味・わかりやすい解説

モーブ
もーぶ
mauve
mauvein

モーベインあるいはアニリンパープルともいう。1856年、キニン合成を目的とした不純なアニリンの酸化の研究途上、イギリスのW・H・パーキンによって発見された最初の合成染料。1857年にモーブとして市販された。名称ゼニアオイの花色に由来し、そのフランス語のmauveからモーブ(またはモーベイン)と名づけられた。美しい紫色に絹を染色するが、溶解性の低いことと、耐光堅牢(けんろう)度の低いことから、短期間で市場から姿を消した。単一な成分でなく、N-フェニルフェノサフラニンを主成分とするアジン系塩基性染料である。

[飛田満彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モーブ」の意味・わかりやすい解説

モーブ
Mauve, Anton

[生]1838.9.18. ザーンダム
[没]1888.2.5. アルンヘム
オランダの画家。 1870年頃よりハーグで活躍,85年以降ラレンに移住した。妻は V.ゴッホのいとこ。バルビゾン派影響を受け,農漁村に取材し,コロー風の灰色と青の調和基調にした水彩画を得意とした。

モーブ
mauve

絵具色名一つアニリン染料グループに属する合成有機染料で,1856年イギリスで W.パーキン卿によってつくられた。純粋なモーブ染料は赤みがかった紫色の結晶で,使用後は鈍い紫になる。退色しやすいが,しかし水彩画用の絵具として現在でもわずかながら用いられている。

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