日本大百科全書(ニッポニカ) 「アニリンブラック」の意味・わかりやすい解説
アニリンブラック
あにりんぶらっく
aniline black
酸化染料の一つであるが、染料というよりむしろ染色法と考えられる。1860年ライトフットJohn Lightfoot(1832―1872)により発見された(1863年説もある)。安価で堅牢(けんろう)な黒が得られるので、現在も広く利用されている。木綿用プロセスとしてもっとも重要なものは「熟成黒aged black」法である。すなわち、アニリン、塩酸アニリン、塩素酸ナトリウム、塩化アンモニウム、酢酸アルミニウム、銅またはバナジウム塩からなる染浴に繊維を浸したのち、繊維を乾燥させ、60~70℃で短時間熟成させる。必要であればさらにクロム酸処理をする。構造は複素環であるアジン骨格を有する複雑な高分子である。アニリンを銅触媒とクロム酸で酸化したのち、硫酸で脱クロムと脱銅を行って得た色素は、堅牢な黒色有機顔料であるピグメント顔料(C. I. Pigment Black 1)として、印刷インキ、塗料、プラスチック着色剤、化粧品などに広く利用されている。
[飛田満彦]