改訂新版 世界大百科事典 「フエ条約」の意味・わかりやすい解説
フエ条約 (フエじょうやく)
1883年と84年にフランスとベトナムとの間に締結された保護条約。ベトナムの植民地化を決定した。1882年のリビエール事件を機にフランスのベトナム北部侵略が本格化し,83年8月フランス艦隊がフエHue(ユエ)を襲った。屈服したフエ朝廷は同月25日,代表アルマンとの間に仮条約28ヵ条を結んだ。これによってベトナムはフランスの保護国となり,トゥーラン(現,ダナン)など3港が開港され,フランス軍による黒旗軍の駆逐が公認された。これを第1次フエ条約(アルマン条約)という。しかし北部の官吏はこれを認めず,清も大兵を派遣して黒旗軍とともにフランスに対抗したため,フランスは北部全域の完全占領を行い,他方84年6月パトノートルはフエで実力者グエン・バン・トゥオン(阮文祥)との間に第2次フエ条約19ヵ条(パトノートル条約)を結んだ。これで第1次フエ条約が確認されたほか,北部の分割とフランスの主権が認められ,87年に成立するフランス領インドシナ連邦の基礎が固められた。
執筆者:桜井 由躬雄
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