精選版 日本国語大辞典 「ユエ」の意味・読み・例文・類語
ユエ
- ( Hué ) ベトナム中部の都市「フエ」のフランス語名。
ベトナム中部、トゥアティエン省の省都。フエともよばれ、漢字では順化と書く。ハノイとホー・チ・ミンのほぼ中間、南シナ海から約16キロメートル内陸のアンナン山脈東斜面の狭い平野に位置する。人口27万1900(2003推計)。歴史的都市のために、住民には仏教徒、知識人が多い。市内はフォンザン川(香江)によって南北に分かれ、南部にはマーケット、北部には王宮や要塞(ようさい)などがあり、歴史的な遺物、遺跡に富んでいる。チャム人の遺跡も多く、博物館にはその遺物が納められている。ベトナム戦争中、1968年のテト攻勢で市街の9割が破壊されたが現在は復興が進んでいる。
[菊池一雅]
もともとベトナム人の居住地ではなく、3世紀に林邑(りんゆう)(チャンパ)の辺境であったが、10世紀にはチャンパ領北部、烏(う)・里2州の中心となっていた。しかし、ベトナム人の南進の歴史のなかで陳(ちん)朝(チャン朝)の英宗が策略をもってチャンパから烏・里2州を奪い(1307)、順州、化州と改めてから順化の名がおこるとともに、化(ホア)の訛音(かおん)フエ(ユエ)が通称となった。黎(れい)朝(レ朝)後半、順化の鎮守となった阮(げん)(グエン)氏が北方の鄭(てい)(チン)氏と対抗した南北分裂期に、阮氏はその居城を富春(順化)に定めたが、黎朝末の西山党(タイソン党)の乱に乗じた鄭氏軍によって占領され(1774)、阮氏は南方に逃げて滅亡した。
その後西山党が北征を開始するとフエはその手中に帰し、西山党を滅ぼして阮朝が成立(1806)するとその王都となった。1882年ベトナムを侵略したフランス軍に占領され、フエ条約(1883)で阮朝がフランスの保護王朝となったのち、1945年の独立まで保護領安南の首府であり、政治都市ハノイや商業都市サイゴンとは際だって対照的な都市として発展した。
[川本邦衛]
フランスの学者。〈アブランシュの司教〉の名で呼ばれる。1歳半で父親を,6歳で母を失い,カンのイエズス会で13歳まで学び,カン大学で法学博士となる。21歳でパリに出たときには数学者として,またギリシア語,ヘブライ語の碩学として知られていた。オリゲネスの翻訳や《解釈論》《翻訳論》などの著作が注目されて,1670年ボシュエの下で王太子の教育に当たるよう任命され,〈Ad usum Delphini(王太子用)〉の名で知られるギリシア・ラテン叢書を刊行した。当時の文学サロンとして有名なランブイエ館にも出入りし,新旧論争では古代派であった。1674年アカデミー・フランセーズ会員となった。76年聖職に入り,85年ソアソンの司教,91年ノルマンディーのアブランシュ司教となったが,学問に専念するため99年に辞して,8000冊の蔵書と古写本200をパリのイエズス会に寄付して寄寓した。青年時代はデカルトの賛同者であったが,60歳ころから厳しい批判者となり懐疑主義に向かった。ラ・フォンテーヌ,セビニェ夫人,ラ・ファイエット夫人の知遇を受け,当時の文学界の指導者と目されたユエは,学者であるとともに自身も繊細なラテン詩,ギリシア詩も書き,後世サント・ブーブも文学者として高く評価している。
執筆者:松原 秀一
フランスの画家,版画家。はじめJ.L.T.ジェリコーに心酔したが,のちにR.P.ボニントンと親交をもち,同じような作風をもつにいたった。しかしユエはしだいにコンスタブルの影響をうけ,色調と筆触が重くなり,17世紀のオランダ風景画に近づく。《僧院の背後に沈む太陽》(1831)は,文学的幻想と荒々しい自然との組合せによって最初のロマン主義風景画と考えられる。外国旅行ののち風景画の明暗の対照が大きくなり,また神秘感を深める。親友のドラクロアによって彼の風景画は高く評価されたが,その後ユエの名は忘れられていた。習作,水彩,パステルにおける印象主義の先駆的な光の取扱いは再評価に値する。ロマン主義的風景版画の代表者の一人としての腐食銅版画36点,石版画54点も注目に値する。
執筆者:坂本 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「フエ」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…人口21万9000(1992)。フランス語風にユエとも呼ばれ,漢字では順化と書く。標高15m,南シナ海海岸から約16km内陸の海岸平野にあり,市の中央をフォンザン川(香江)が流れる。…
※「ユエ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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