フランス式庭園(読み)フランスしきていえん(その他表記)French garden

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フランス式庭園」の意味・わかりやすい解説

フランス式庭園
フランスしきていえん
French garden

17世紀のフランスで発達した幾何学的な庭園,およびその影響を受け 18世紀にかけてヨーロッパ諸国に築造された同形式の庭園をさす。ブルボン朝の絶対王政下,政治,文化の最高潮の時代に A.ル・ノートルによって大成された。彼はボー・ル・ビコント庭園ベルサイユ宮庭園において様式を確立。ル・ノートルの登場以前にも,長い並木道や刺繍花壇といったフランス独自の庭園の要素はみられたが,彼はフランスの比較的平坦な地形を最大限に生かすよう,比例均衡美を駆使した雄大な園景を造り出した。幅広い園路には,しばしば水路を加えて中央に無限に延びるかに見える見通し線をつくり,その両側対称に造り上げながら,建物近くでは花壇や水花壇,噴水彫刻などを用いたきめ細かい装飾園とし,遠ざかるにつれボスケや水面マッシブに扱った意匠を展開して変化をつける。明解な設計理念,地形に即した自由度の高い構成が人気を博し,ベルサイユ宮庭園を模した王侯宮園が全ヨーロッパ中に出現したが,18世紀後半からは風景式庭園隆盛によって改造されるものも多かった。

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世界大百科事典(旧版)内のフランス式庭園の言及

【庭園】より

…すなわち庭園はメタファーとシンボルの体系として組み上げられていたのである。
[フランス式庭園の成立]
 イタリアの庭園はヨーロッパ各国に大きな刺激を与え,そのボキャブラリーがアルプスの北方へと輸出されたが,やがてそのなかからフランスに新しい様式への動きがあらわれ始める。まず宮廷造園家の家系に生まれたモレClaude Mollet(1563ころ‐1650ころ)が,16世紀後半に刺繡(ししゆう)文様を生垣に写しとったような刺繡花壇を開発し,さらに17世紀にいたってA.ル・ノートルが,イタリアと違って主として平地に営まれた幾何学的構成をもつ庭園に強い軸線を導入して,ブルボン朝の栄華にふさわしい壮大な様式を完成させた。…

※「フランス式庭園」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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