ボー・ル・ビコント庭園(読み)ボー・ル・ビコントていえん(その他表記)Les Jardins Vaux-le-Vicomte

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボー・ル・ビコント庭園」の意味・わかりやすい解説

ボー・ル・ビコント庭園
ボー・ル・ビコントていえん
Les Jardins Vaux-le-Vicomte

1655年にルイ 14世の財務卿 N.フーケがパリの南東方 40km余の地に A.ル・ノートルに命じて造らせた,フランス・バロック庭園の初期の傑作 (→ベルサイユ宮庭園 ) 。ル・ノートルの出世作となった。地形的変化に富み立体的な空間表現を主体としたイタリア式庭園とは異なり,冷温高湿で平坦地形という自然条件を生かして,平らな見通し線を縦横に配したオープンな軸線構成が展開されている。モニュメンタルで長大な視界が,整形に刈込んだ樹林の壁や大運河,噴水などの水の道によって補強されながら敷地のはてまで延び,さらに擁壁や階段,カスケードといった人工の高低差が加えられて,ドラマチックな造形を生んでいる。視覚的なトリック寒色の使用による望遠効果を用いて軸線を1点に集中させ,その終点の山の頂に城館が建つような幻想をつくりだしている。ここで確立した手法によって,17世紀のフランス式庭園の展開の方向が定まった。

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