ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ル・ノートル」の意味・わかりやすい解説
ル・ノートル
Le Nôtre, André
[没]1700.9.15. パリ
フランス式庭園の創始者。「王の庭園師」「庭園師の王」などと呼ばれた。ルイ 13世の宮廷庭園師であった父ジュアンの跡を継ぎ,父の死後 1637年チュイルリー宮の庭園監督官となった。 1662年から,彼が N.フーケのために造ったボー・ル・ビコント庭園に羨望の念をもったルイ 14世により,王の宮廷造園総監に任命され,彼の最高傑作となったベルサイユ宮庭園の造営にあたる (→ルイ 14世様式 ) 。そののちシャンティイー城やグラン・トリアノンの庭園を設計,フォンテンブロー宮やサン・クルー宮,チュイルリー宮などの宮殿庭園の改造を行なう。 1678年ローマに赴きバチカン宮の庭園を,さらにはイギリスのケンジントンの庭園やセント・ジェームズ公園を計画した。その作庭理念は広大な平面を用い,建築を中心とする多様な要素を左右対称の軸線構成のなかに幾何学整形に秩序づけるもので,彫刻,噴水,花壇などの建築的要素の完全な均衡状態が絶対王権を表現した。このフランスの平坦な地形と風土に適合したル・ノートル式と称される様式は,ヨーロッパ諸国の宮殿計画を左右する影響力をもった。
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