ルノートル(英語表記)André Le Nostre

デジタル大辞泉 「ルノートル」の意味・読み・例文・類語

ル‐ノートル(André Le Nôtre)

[1613~1700]フランス造園家。フランス式庭園の大成者で、ベルサイユ宮殿庭園設計

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精選版 日本国語大辞典 「ルノートル」の意味・読み・例文・類語

ル‐ノートル

  1. ( André Le Nôtre アンドレ━ ) フランスの造園家。幾何学的に整然と構成されるフランス式庭園を創始。ベルサイユ宮の大庭園の設計にあたる。(一六一三‐一七〇〇

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改訂新版 世界大百科事典 「ルノートル」の意味・わかりやすい解説

ル・ノートル
André Le Nostre
生没年:1613-1700

ルイ14世時代のフランスの造園家。Le Nôtreとも書く。ル・ノートル家は代々王室の庭師で,アンドレは絵画から建築まで含めた広い観点に立った総合芸術の立場から造園を行った。とりわけニスロンJ.F.NiceronやデザルグG.Desarguesの透視図法理論に影響され,独自の幾何学的庭園を考え出した点で名高い。フランスにおける最初バロック建築とみなされるボー・ル・ビコントVaux-le-Vicomteの城館(1656-61)は,ル・ボーによる建物とともに,ル・ノートルの庭園が配せられている。軸線,左右対称性に加えて庭園全体の透視図法的効果,円や正方形あるいは円錐や角柱状に整えられた庭園構築物,植栽などが,この庭園を特徴づけている。この成功に引き続き彼はベルサイユ宮殿の庭園を手がけることになり,大運河,噴水といったバロック的演出効果をともなった大庭園をつくり上げる。王室造園家として他にも,フォンテンブロー,マントノン,サン・クルーなどの庭園設計に携わった。彼は,自然を一定の幾何学的,視覚的秩序の中に引き込み,庭園が完結した宇宙としての調和を有することに力点を置いた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ルノートル」の意味・わかりやすい解説

ル・ノートル
Le Nôtre, André

[生]1613.3.12. パリ
[没]1700.9.15. パリ
フランス式庭園の創始者。「王の庭園師」「庭園師の王」などと呼ばれた。ルイ 13世の宮廷庭園師であった父ジュアンの跡を継ぎ,父の死後 1637年チュイルリー宮の庭園監督官となった。 1662年から,彼が N.フーケのために造ったボー・ル・ビコント庭園羨望の念をもったルイ 14世により,王の宮廷造園総監に任命され,彼の最高傑作となったベルサイユ宮庭園造営にあたる (→ルイ 14世様式 ) 。そののちシャンティイー城やグラン・トリアノンの庭園を設計,フォンテンブロー宮やサン・クルー宮,チュイルリー宮などの宮殿庭園の改造を行なう。 1678年ローマに赴きバチカン宮の庭園を,さらにはイギリスのケンジントンの庭園やセント・ジェームズ公園を計画した。その作庭理念は広大な平面を用い,建築を中心とする多様な要素を左右対称の軸線構成のなかに幾何学整形に秩序づけるもので,彫刻,噴水,花壇などの建築的要素の完全な均衡状態が絶対王権を表現した。このフランスの平坦な地形と風土に適合したル・ノートル式と称される様式は,ヨーロッパ諸国の宮殿計画を左右する影響力をもった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルノートル」の意味・わかりやすい解説

ル・ノートル
るのーとる
André Le Nôtre
(1613―1700)

フランスの造園家。チュイルリー宮の首席造園家の子として生まれる。1637年に父の地位を引き継ぎ、さらに56年には王宮庭園監査官に登用された。初期の傑作ボー・ル・ビコント宮の庭園(1655ころ~61)には古典時代の庭園に固有の幾何学的形式が導入されており、のちに手がけたベルサイユ宮の庭園の手本となった。そのほかムードン、マルリ、サン・ジェルマン・アン・レー、フォンテンブロー、シャンティイといった重要な王室離宮の造園に従事したが、これらの庭園では池泉、花壇、四阿(あずまや)、樹木などが、よく調整された全体のなかでそれぞれの役割を適確に果たしており、巨大な舞台装置を連想させる。彼によって提示された庭園に関する新しい芸術観は、ヨーロッパ諸国の王侯によって積極的に取り入れられたので、その後の庭園芸術に及ぼした影響はきわめて大きい。

[濱谷勝也]


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百科事典マイペディア 「ルノートル」の意味・わかりやすい解説

ル・ノートル

ルイ14世時代のフランスの造園家。宮廷造園家の祖父・父をもち,フランスの地形に合ったル・ノートル式と呼ばれる壮大な庭園を設計。ル・ボーが建物を手がけたボー・ル・ビコントの庭園が最初の仕事で,以後ベルサイユ宮殿など多くの庭園を設計し,ルイ王家の宮廷造園家として活躍,幾何学的形態を特色とするフランス式庭園の基礎を築いた。→庭園

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世界大百科事典(旧版)内のルノートルの言及

【庭園】より


[フランス式庭園の成立]
 イタリアの庭園はヨーロッパ各国に大きな刺激を与え,そのボキャブラリーがアルプスの北方へと輸出されたが,やがてそのなかからフランスに新しい様式への動きがあらわれ始める。まず宮廷造園家の家系に生まれたモレClaude Mollet(1563ころ‐1650ころ)が,16世紀後半に刺繡(ししゆう)文様を生垣に写しとったような刺繡花壇を開発し,さらに17世紀にいたってA.ル・ノートルが,イタリアと違って主として平地に営まれた幾何学的構成をもつ庭園に強い軸線を導入して,ブルボン朝の栄華にふさわしい壮大な様式を完成させた。これが〈フランス式(整形)庭園〉と一般に呼ばれるもので,彼はボスケbosquet(叢林)で庭園の主部を限りとり,そこに刺繡花壇,大噴泉などを整然と配して無限へと延びる見通し線を造りだした。…

※「ルノートル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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