フロルス(その他表記)Lucius Annaeus Florus

改訂新版 世界大百科事典 「フロルス」の意味・わかりやすい解説

フロルス
Lucius Annaeus Florus

2世紀前半のローマの作家。生没年不詳。リウィウスの大著《ローマ建国史》の〈抄録版〉の著者として知られるが,生涯および著述活動については不明な点が多く,姓名も個人名のLuciusと氏族名のAnnaeusは信憑性を欠く。ハドリアヌス帝の詩作仲間の一人としてその名が伝えられているフロルスや,断片しか現存しない対話編《ウェルギリウス詩人か弁論家か》の著者Publius Annius Florusと同一人物と推定される。〈抄録版〉はリウィウスの要約でも抜粋でもなく,ローマが建国からアウグストゥス帝の時代まで,勝利をおさめた戦争に焦点をあて,ローマ帝国の偉大な足跡をたたえた戦記である。おもな典拠はリウィウスであるが,ほかサルスティウスも利用した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フロルス」の意味・わかりやすい解説

フロルス
Florus, Publius Annius

1~2世紀のローマの歴史家,詩人。北アフリカ出身。 Lucius Annaeus Florus; Julius Florusという名も伝えられている。主著は,アウグスツス帝の時代にいたるまでのローマ史を記した『700年全戦役略記』 Epitoma de Tito Livio bellorum omnium annorum DCC libri duo。ほかに,対話篇『ウェルギリウスは雄弁家か詩人か』 Vergilius orator an poetaの断片が現存。

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世界大百科事典(旧版)内のフロルスの言及

【ラテン文学】より

…タキトゥスは歴史家として,帝政の悪事を余すところなくえぐり出した大作《年代記》と《歴史》,および小品の《ゲルマニア》と《アグリコラの生涯》を,また修辞学者としては《弁論家についての対話》を著した。ほかにウェレイウス・パテルクルスVelleius Paterculus,クルティウス・ルフスCurtius Rufus,フロルスなどの歴史家の名がみられる。またそのほかの散文作家には,小説《サテュリコン》の作者ペトロニウス,百科全書《博物誌》の著者の大プリニウス,《書簡集》を残した雄弁家の小プリニウス,農学書を残したコルメラ,2世紀に入って,《皇帝伝》と《名士伝》を著した伝記作家スエトニウス,哲学者で小説《黄金のろば(転身物語)》の作者アプレイウス,《アッティカ夜話》の著者ゲリウスなどがいる。…

【ローマ没落史観】より

…それがゆえにアウグストゥスによる内乱終結と元首政樹立は〈永遠のローマ〉理念の謳歌を生み出すが,ローマ没落観は帝政期にもなお存続した。セネカは〈すべて死すべき者がなせし事は死すべき運命にある〉と述べて自らの時代を人間の老年にたとえ,2世紀の歴史家フロルスはカルタゴ炎上からグラックス兄弟の改革までの時期にローマ国家の変容を認めた。 他方,ユダヤ教や原始キリスト教はローマの支配を断罪し,ローマ帝国を《ダニエル書》のいう滅ぶべき第四の帝国とみなした。…

※「フロルス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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