化学辞典 第2版 「ブテナント」の解説
ブテナント
ブテナント
Butenandt, Adolf Friedrich Johann
ドイツの生化学者.マールブルク,ゲッチンゲンの両大学で化学と生物学を学び,1927年学位を取得.その後,ゲッチンゲン大学の有機化学者A. Windaus(ウィンダウス)の助手,1931年私講師,1933年ダンチヒ工科大学有機化学教授となった.1936年ベルリンのカイザー・ウィルヘルム協会生化学研究所所長となり,そのチュービンゲン,ミュンヘンへの移転に伴って,1945年からチュービンゲン大学,1956年からミュンヘン大学教授を兼任した.1960~1972年マックス・プランク協会総裁を務めた.性ホルモンの研究を精力的に行い,1929年にエストロン,1931年にアンドロステロン,1934年にプロゲステロンを単離し,化学構造を決定した.この業績により1939年L. Ruzicka(ルジチカ)とともにノーベル化学賞を受賞したが,ナチスの圧力によって辞退させられ,1949年になって賞状とメダルを受け取った.このほか,性ホルモンと発がん性の関係を研究,またカイコガから最初の昆虫ホルモンとしてエクジソンの単離(1954年),最初のフェロモンとしてボンビコールの単離(1959年)などの業績がある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報