日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブライズヘッドふたたび」の意味・わかりやすい解説
ブライズヘッドふたたび
ぶらいずへっどふたたび
Brideshead Revisited
イギリスの小説家イーブリン・ウォーの代表的な長編小説。1945年刊、1960年改訂。ウォーのカトリック改宗後に書かれた本格的作品で、いままでの滑稽(こっけい)な「ふざけた」作風からの変貌(へんぼう)がみられる。ブライズヘッドの貴族フライト家の館(やかた)に集まる旧友たちの邂逅(かいこう)と別離の物語で、プルーストの影響を惜しみなく発揮した回想形式をとっている。フライト家を訪れた将校チャールズ・ライダーはこの家の次男セバスチャンとオックスフォード大学の学生時代に同性愛の関係があり、その後セバスチャンの妹ジュリアとも関係があったという前歴の持ち主である。愛しながらも、すでに夫のあるジュリアとライダーは別れるのだが、これはカトリック教会の立場に従ったことになる。この作品の回転軸になっているのはカトリック教会だが、グレアム・グリーンやF・モーリヤックのように正面に教義が出てこず一つの道具立てに使われていて、それがかえってこの作品に甘美な味わいを添えている。
[出淵 博]
『吉田健一訳『筑摩世界文学大系79 ブライズヘッドふたたび』(1971・筑摩書房)』▽『小野寺健訳『青春のブライズヘッド』(1977・講談社)』