改訂新版 世界大百科事典 「プラズマ圏」の意味・わかりやすい解説
プラズマ圏 (プラズマけん)
plasmasphere
電離圏で生成された数eV以下の粒子エネルギーのプラズマで満たされた地球を取り巻くドーナツ形の領域。プラズマ圏は地磁気緯度約60°で地表から出る磁力線におおわれた形をしており,プラズマ数密度は赤道面で102~103個/㏄程度である。その外側ではプラズマ密度は急激に減少し,1~10個/㏄程度になる。この二つの領域の境界をプラズマポーズplasmapauseと呼ぶ。プラズマ圏は電離圏のプラズマが地球の磁力線に沿って上方へ拡散し,蓄積されてできたもので,電離圏の延長にすぎないが,通常1000km程度の高さまでを電離圏,これより高い領域をプラズマ圏と呼ぶことが多い。この区別は重力の効果でイオン組成が高さによって変化することによる。プラズマを構成する主イオンはプラズマ圏でH⁺やHe⁺の軽いイオン,電離圏でO⁺,NO⁺などの重いイオンになっている。プラズマ圏全体に存在するプラズマの量は,太陽の放射により電離圏で生成されるプラズマ量の5~10日分に相当する。したがってプラズマ圏は電離圏で生成されたプラズマの巨大な貯蔵所になっている。太陽放射がとだえた夜間に電離圏が存在し続けるのは,この貯蔵所からプラズマが補給されるためである。逆に昼間には電離圏で生成された新鮮なプラズマが上方へ拡散しプラズマ圏に蓄積される。このようにプラズマ圏と電離圏はプラズマの交換を毎日繰り返している。プラズマ圏が地磁気緯度約60°以下の領域に限定されているのは磁気圏の形状と磁気圏対流で説明される。極地域から出る磁力線は磁気圏の尾部を形成し惑星空間へとつながっているため,極域の電離圏プラズマは磁気圏尾部を通って惑星空間に自由に逃げ出し蓄積されることがない。この結果できる低いプラズマ密度の領域が磁気圏対流によって地磁気緯度60°付近まで広がる。このようにプラズマポーズを境にして高密度のプラズマと低密度のプラズマが接する構造がつくられる。
→磁気圏
執筆者:丸橋 克英
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報