プラズマ(読み)ぷらずま(英語表記)plasma 英語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プラズマ」の意味・わかりやすい解説

プラズマ
ぷらずま
plasma 英語
plasma フランス語
Plasma ドイツ語

プラズマということばはギリシア語で「型に流し込んでつくられる状態」の意味で、生理学では「血漿(けっしょう)」、細胞学では「原形質」を意味するが、物理学においては「相互作用をする荷電粒子の集団」と理解される。1929年にアメリカのラングミュアが、放電管内に生ずる陽光柱の状態を表すのにこのことばを用いたのが、物理学におけるプラズマの概念の始まりである。現在では、超高温の電離気体ionized gasの状態を表すのに用いられることが多いが、これは、物質が固体、液体、気体と、温度を高くするにしたがって状態を変え、超高温の状態ではさらに特徴的な性質を示すことに対応している。この意味で「物質の第四の状態」と把握されている。

[宮原 昭]

プラズマの定義

プラズマは微視的にみると、正負の電荷をもつ粒子と中性粒子との混合物であり、全体的にはほぼ中性であることが必要であるが、それだけでは十分でない。考えている系が、集合体としての集団作用を示すことが必要で、そうでなければわざわざプラズマの概念を取り上げる必要はない。集団作用が現れるためには、荷電粒子間の平均距離にも比すべき「デバイの長さ」Debye lengthという量に比べて、プラズマの寸法が十分大きければよい。デバイの長さλD

程度である。ここでT(温度)は後述の電子温度(eV)、ne(電子密度)はm-3単位である。

 現在、プラズマとよぶときは、電離気体を考えることが多いので、正負の荷電粒子が両方とも動きうることを予想しているが、元来の定義によれば、金属中の格子イオンと電子の系や電解質溶液中の正負イオンの存在もプラズマと考えられる。実際、プラズマの定義に必要なデバイの長さの概念は、強電解質の理論から派生してきた。しかしプラズマの応用の大部分が核融合とプラズマプロセスであるため、ここではプラズマとして、気体プラズマをおもに取り扱う。この場合プラズマの系を考えるときに必要な量は、系を形成するイオン種、電子、中性粒子の密度および各粒子の温度であり、さらに系全体としての体積、粒子やエネルギーの拡散の時定数などである。

 密度は単位体積当りの粒子の個数で表すが、温度は絶対温度で表すよりも、エネルギー単位である電子ボルトeVを用いることが多い。これは、プラズマ諸量の関係を表すときに、温度そのものよりもボルツマン定数kB=1.38×10-23J/Kを乗じたkBTの形で表すことが多いので、エネルギーの次元のもつ量kBTをそのまま温度とみなして、単位エネルギーもエネルギーの単位でよぶのが便利なためである。1eVは1.602×10-19Jであるから、1eV=kBTから、1eVに相当する絶対温度Tは1.16×104Kである。目安としては1eVは約1万℃と考えてよい。

[宮原 昭]

プラズマの研究史

プラズマの研究は、ラングミュアらの放電管内の陽光柱の研究に端を発しているが、その後の研究によって、この概念の適用できる物質の存在は、宇宙全体の規模で考えると99.9%以上であると見積もられている。プラズマを特徴づける量であるデバイの長さは、放電管では10マイクロメートル、惑星空間では10メートル程度と、考えられている系の寸法に比べて十分短い。スウェーデンアルベーンの1970年ノーベル物理学賞受賞は、宇宙空間のプラズマ物理研究の功績による。

 地上のプラズマの研究は、電気工学の発展に伴う放電現象やその応用に関連して広範囲に行われてきた。しかしなんといっても画期的にプラズマの研究を促進したのは、核融合研究との関連においてである。核融合研究は、不幸なことに水素爆弾によって実用化された核融合反応エネルギーの利用を、制御された形で行う目的で開始された。この研究が国際協力のもとに公開で行われたのは、1955年の第1回原子力平和利用国際会議以降のことである。当面の目標を、重水素・三重水素の混合プラズマで、1億℃以上の超高温プラズマを、密度と閉じ込め時間の積が1020sec/m3といういわゆるローソン条件を満たす形で実現することに置いたが、この目標はJET(Joint European Torus、欧州トーラス共同研究施設)によって達成された。次段階の目標として核融合実験炉ITER(イーター)(International Thermonuclear Experimental Reactor、国際熱核融合実験炉)計画が発足したが、この計画の目的は核燃焼プラズマの研究を行い、500メガワットの核融合出力を長時間持続し、発電炉の鍵(かぎ)となる技術を実証することである。2001年に完了した工学設計活動(EDA)の成果をさらに発展させ、核融合実験炉ITERの建設開始に向けた技術的な準備が着実に進められている。これと平行して、EU(ヨーロッパ連合)、日本、ロシア、中国、アメリカ、韓国の政府代表による公式協議が進められてきた。2003年末までに、協定書案、ITER国際研究機構の構成・運営・物品調達方式・分担、リスク管理、知的財産権などの検討はほぼ完了した。政府高官による建設地および費用分担の交渉が2003年12月より本格的に開始された。ITERの建設地に関しては、EUはカダラッシュ(フランス南部)、日本は六ヶ所村(青森県)への誘致を強く主張し、お互いに譲らず、膠着(こうちゃく)状況がしばらく続いていたが、2005年6月、カダラッシュに建設されることが決定した。

 プラズマ研究のもう一つの動機として、電離層と通信との関係がある。地上約50キロメートルを超えるとだんだんと荷電粒子の密度が増してプラズマ状態となり、350キロメートルくらいで最大になる。そこでの短波長電波の反射や混変調効果(ルクセンブルク現象)の研究は、無線通信の発達とともに盛んに行われた。そのほかにも、宇宙電磁現象の理解や宇宙船との関連で行われているプラズマ推進の研究もある。

 1980年ころから、核融合研究とは対照的に低温プラズマの研究が、情報機器の大量生産の要求と相まって盛んになった。現在プラズマ工学といわれている分野にはIC(集積回路)製造に関するプラズマ加工、PVD(Physical Vapour Deposition、物理蒸着法)、CVD(Chemical Vapour Deposition、化学蒸着法)などのプラズマコーティング、プラズマを用いる光技術、TVなどのプラズマディスプレー、人工ダイヤモンド生成から環境浄化まで広範囲な応用分野が展開されている。

[宮原 昭]

プラズマ物理学

プラズマは、荷電粒子間のクーロン相互作用のために通常の気体にはみられない特異な性質を現す。これらを研究する物理学の分野をプラズマ物理学という。

[宮原 昭]

プラズマの生成・閉じ込め・加熱

プラズマを生成するには、気体を電離させる必要があるので、気体分子や原子の軌道電子に電離エネルギー以上のエネルギーを与える。水素プラズマの場合、水素原子の電離エネルギーは13.6eVであるので、それ以上のエネルギーを与える必要がある。気体を高温にしていく場合には、粒子はボルツマン分布をしておりエネルギーの高い粒子も含まれるので、温度は13.6eVに相当する15万℃にしなくても電離することができる。通常、プラズマを生成するには、あらかじめ紫外線照射などによって弱く電離した気体に電流を流して、ジュール熱によって加熱したり(オーム加熱)、プラズマに磁場(磁界)が印加されている場合には、磁力線の周りを荷電粒子であるプラズマ粒子はサイクロトロンのように周回するが、その周波数(ジャイロ周波数、サイクロトロン周波数とよばれる)に共鳴する高周波を外部から加えて加熱する方法(サイクロトロン共鳴加熱)は効率のよい加熱法である。ガラス容器に封入されている気体から生成されるプラズマの応用であるネオン管や蛍光灯では、中性粒子が多く混在しているので、プラズマをそのまま放置しておくと、熱伝導や再結合によってエネルギーを失って通常の気体となってしまうので、外部から絶えず電力を供給してプラズマ状態を維持している。核融合炉心プラズマは、1億℃以上の超高温の重水素・三重水素プラズマの生成が必要となる。このような高温に加熱するためには、エネルギーや粒子の逸出の時定数を、十分長くして有効な加熱が行えるようにする必要がある。

 核融合研究の重要な課題に高温プラズマの閉じ込めがある。プラズマが容器に触れるとその表面が蒸発し、放射損失によってプラズマが冷えてしまうので、普通の容器による閉じ込めは不可能である。高温プラズマの閉じ込めは、プラズマが荷電粒子の集合体であることを利用して磁場を用いる方法(磁場閉じ込め)と、粒子が質量をもっていることを利用する慣性閉じ込めの方法がある。前者はプラズマの寸法を大きくすることにより、1億℃のプラズマでも数秒程度の閉じ込め時間を得ることができるが、後者は粒子の速度に密接に関係して、通常はナノ秒(10-9秒)以下である。核融合炉の方式に、密度1020/m3、閉じ込め時間数秒を考える磁場閉じ込め方式と、密度1029~1030/m3、閉じ込め時間ナノ秒以下の慣性閉じ込め方式のものがあるのは、高温プラズマの閉じ込めの方法に対応している。

 プラズマを1億℃以上まで加熱しようとすると、プラズマの電気抵抗は高温では小さくなるのでオーム加熱は有効でなくなる。この場合には、高エネルギー中性粒子を注入してプラズマ粒子とのエネルギー緩和によって加熱する方法(中性粒子入射加熱)や、イオンのサイクロトロン周波数に共鳴する高周波を印加して加熱する方法(イオンサイクロトロン共鳴加熱)が有効である。高温プラズマの損失機構としては、閉じ込めの不完全さによる粒子損失、熱伝導損失とともに、放射損失や荷電交換損失が問題となり、全体としてのエネルギーや粒子のバランスが核融合研究の課題である。

[宮原 昭]

プラズマのモデル

プラズマの性質やふるまいを理解し記述するためには、いろいろの側面からみる必要がある。このモデルには大きく分けて、(1)波動を伝える空間を形成する連続媒質とする見方と、(2)荷電粒子の集合体との見方、の二つがある。この二つの見方は相補的であって、この両面からみて初めてプラズマを本当に理解できるといえる。

[宮原 昭]

単粒子モデル

外部磁場が一様・定常で、外力がローレンツ力のみのときは、荷電粒子の旋回中心は1本の磁力線に沿って運動するが、磁場が不均一であったり外力が加わったりすると、旋回中心は磁力線に沿って垂直な方向にも動き始める。磁場に垂直な方向への運動をドリフト運動という。両端が強い直線状のいわゆるミラー磁場による閉じ込めや、ドーナツの輪切り面が、みなソレノイドコイル(導線を多数回円筒状に巻いたコイル)になっているような単純トーラス磁場におけるプラズマ粒子のドリフト運動は、この考え方で第一段階の記述を行うことができる。このようなプラズマのモデルを単粒子モデルとよぶ。

[宮原 昭]

MHDモデル

プラズマは多数の荷電粒子の集合体であるから、当然ボルツマン方程式で記述できる。さらに高温プラズマでは、第一近似としてボルツマン方程式の右辺の粒子間の衝突を無視することができるので、粒子間の相互作用として集団的運動に起因する電磁場によるもののみを取り入れた方程式(これをウラソフ方程式とよぶ)によって記述することができる。プラズマはイオンと電子との混合物と考えられるが、イオンと電子では質量が3桁(けた)以上も異なるので、質量の寄与すなわちプラズマの運動は、だいたいにおいてイオンの運動のことであり、電子は非常に動きやすくかつ速度の平均値もイオンの速度の平均値よりもはるかに大きいので、電流はほとんど電子の寄与による。このようにプラズマが全体としての運動と、電流のふるまいを支配する二つの方程式を独立に考えた系をMHDモデルとよんでいて、プラズマの巨視的な運動を議論するのに適している(MHDは磁気流体力学の略)。

[宮原 昭]

プラズマ振動

プラズマ中の波動でもっとも特徴的なのは、巨視的に電気的に中性のプラズマがわずかに平衡位置からずれたとき、そのずれを取り戻す力が作用した結果生じるプラズマ振動plasma oscillationである。その振動数はプラズマ密度によるが、通常、主として電子が動き、イオンは止まっていると考えられるので、プラズマ周波数ωpeは、

で与えられ、電子プラズマ周波数とよばれている(ここでeは電子の電荷、meは電子の質量、neは電子の密度、ε0は真空中の誘電率)。この値は電子密度(通常はプラズマ密度に等しい)1020/m3のとき90ギガヘルツ程度である。

 プラズマ振動のように荷電粒子に基づく振動はプラズマを特徴づけるもので、同じ縦波でも音波のようにプラズマ中でも普通の物質中でも現れるものと本質的に異なっている。この波動の減衰機構としては有名なランダウ減衰があるが、これは波の位相速度に近い電子の運動とのエネルギーのやりとりで説明できる。

 プラズマ振動はプラズマ中に励起される代表的な振動であるが、プラズマ(という媒質)中に励起される振動はそのほかにも多くある。この場合、一様・定常なプラズマ中では媒質はテンソル量の誘電率によって特徴づけられる。この量をマクスウェルの方程式で外部電荷、電流をゼロと置いて固有な振動を解析すると、プラズマ中に励起される波動を求めることができる。その代表的なものは、縦波としてはイオン音波、横波としては電磁波、イオンサイクロトロン波、アルベーン波、ホイスラー波などである。ホイスラー波は、地球磁場の磁力線に沿って、南半球で発生した雷の信号を北半球まで伝える波として有名である。

[宮原 昭]

ドリフト波

空間的に密度の非一様性をもつ場合には、プラズマ中の波動はいろいろな影響を受ける。もっとも著しいのは、一様なプラズマ中では存在しない種類の波が現れることで、この波は発生の機構が磁場中の荷電粒子のドリフトと密接に結び付いているので、ドリフト波とよばれている。

 プラズマは荷電粒子の集まりとみなされ、プラズマ中の荷電粒子の運動では粒子間の直接の衝突の影響は比較的小さい。荷電粒子は第一近似では外界から加えられた電磁場中を自由に運動し、第二近似の段階で、他の荷電粒子が集団的に運動するために生ずる電磁場の作用を受ける。個々の粒子との直接の衝突が問題となり統計的な処理が必要となるのは、さらに詳しい議論の段階である。実際、プラズマらしい性質のおもなものは、第二段階までの近似で得られる。

[宮原 昭]

プラズマの電気伝導度と温度依存性

プラズマ中の電気伝導や熱伝導などの輸送現象は、電子がおもな担い手となっている。たとえば、プラズマの電気伝導度の温度依存性はTの3/2乗に比例していて、温度の高いほど抵抗は小さくなる。磁場閉じ込めプラズマの磁場に平行な比抵抗は100eV(約100万℃)ではステンレスと同程度であるが、1キロeV(約1000万℃)では銅の程度、10キロeV(約1億℃)の核融合炉の炉心プラズマでは銅の30分の1という比抵抗値となる。1000万℃以上のプラズマを加熱するときにオーム加熱が有効でなく、高周波加熱や中性粒子入射加熱が必要となるのはこのためである。

[宮原 昭]

プラズマと放射

プラズマ中ではイオンの周りには激しく電子が運動しているから、電子の受ける加速度に伴う放射が存在する。これは通常、X線のなかでは比較的波長の長い軟X線領域に波長のピーク値をもつ制動放射と、磁場が存在する場合に電子のジャイロ運動に基づくシンクロトロン放射がある。プラズマ内部で発生するこれらの放射がどの程度プラズマ外に放射されてくるかは、放射とプラズマの平衡などに関係するが、通常、これは光学的厚さによって表される。

 実験室プラズマや炉心プラズマでは、制動放射に対してプラズマは透明であるが、シンクロトロン放射に対しては不透明であり、黒体放射と同じように考えられている。

 そのほか、プラズマ中の多価イオンの電子レベル間の遷移による線放射がプラズマの内部エネルギーの損失機構としてとくに高温プラズマの生成の際に重要となるが、これらは、その波長域によってプラズマに吸収されたり外界に逸出したりする。この線放射を観測することによって、プラズマパラメーターについての多くの知見を得ることができる。

[宮原 昭]

地球周辺のプラズマ現象

太陽も自身の質量に起因する重力によって閉じ込められたプラズマであるが、太陽系内でもほぼ全域にわたってプラズマが充満していると考えられる。とくに太陽の周辺ではプラズマ密度nが1011~1015/m3、プラズマ温度Tが100eV程度のプラズマがあり、日食の際はコロナとして観測される。地球近傍では地球半径の10倍くらいの距離にわたって地球磁気圏が形成されているので、プラズマがとらえられている。地上70~500キロメートルにわたっては電波伝播(でんぱ)でよく知られた電離圏(電離層)がある。密度がいちばん大きいF‐2層(高さ200~500キロメートル)では、プラズマの密度、温度はそれぞれ1012/m3、0.1eV程度であるが、この領域には中性粒子も多く混在していることがロケットによる観測などで知られている。バン・アレン帯はさらにそれより上層の1万2000キロメートル程度のところにあるプラズマ層で、地球磁場によってとらえられた高速のイオンや電子が盛んに放射を行っている領域である。

 オーロラもプラズマであるが、高緯度地方の高さ数百キロメートルの天空にみられる発光現象で、おもに10キロeV程度のエネルギーをもつ電子が、地球磁場の磁力線に沿って極光帯の電離層まで侵入してきて、大気中の原子・分子を発光させるものである。

[宮原 昭]

プラズマの応用

プラズマのもっとも重要な応用は核融合炉心プラズマである。これは「核融合」の項で詳述している。

 ネオンサインは、プラズマ密度5×1018/m3、電子温度2.5eV、イオン温度0.15eVのネオンのプラズマである。蛍光灯は少量の水銀と100パスカルのアルゴンまたはキセノン、クリプトンなどを封入して放電をおこさせ、その結果生じる水銀の253.7ナノメートル(nm)の共鳴線が、管壁に塗った蛍光物質を励起して白色に近い発光を得るものであり、全入力の20%以上が光として放出されるので広く利用されている。

 プラズマディスプレーは1990年代になって急速な進歩を遂げ実用化された。薄型、軽量、完全平面、大画面などの特徴をもち、液晶ディスプレーとともにブラウン管の表示にとってかわりつつある。原理的には放電安定化抵抗を通して、パルス電圧を電極間に印加し放電を行わせることによる。情報の表示は、放電に伴って発生する光を用いるが、表示の色は、赤色のときはネオンの585.6ナノメートルを用いるが、カラー表示のときはキセノン放電に伴う紫外線を用いて、真空紫外用蛍光体を励起発光させている。

 プラズマを熱源として金属などの溶接・溶断に用いることは、アーク溶接などから始まったが、近年ではさらに高温のプラズマを利用したプラズマジェットが考案され、材料の高速・精密溶断などに用いられている。

 プラズマ中における活性・化学種のプラズマ励起反応を応用するいわゆるプラズマプロセシングは、プラズマCVD、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、プラズマ重合、プラズマ酸化・窒化、炭素被膜生成など広い範囲にわたって材料処理技術の最先端の位置にあり、IC加工も含め今後ますます発達するであろう。プラズマによる負イオン生成や高温による廃棄物処理など環境問題の解決にも、2000年以降応用が始まった。

[宮原 昭]

『西島和彦監修、一丸節夫著『プラズマの物理』(1981・産業図書)』『水野幸雄著『共立物理学講座23 プラズマ物理学』(1984・共立出版)』『宮本健郎著『プラズマ物理入門』(1991・岩波書店)』『川田重夫著『プラズマ入門』(1991・近代科学社)』『Francis F. Chen著、内田岱二郎訳『プラズマ物理入門』(1996・丸善)』『電気学会・マイクロ波プラズマ調査専門委員会編『マイクロ波プラズマの技術』(2003・オーム社)』『プラズマ・核融合学会編『プラズマの生成と診断――応用への道』(2004・コロナ社)』『高部英明著『岩波講座 物理の世界 さまざまな物質系4 さまざまなプラズマ』(2004・岩波書店)』『宮本健郎著『プラズマ物理・核融合』(2004・東京大学出版会)』『電気学会・プラズマイオン高度利用プロセス調査専門委員会編『プラズマイオンプロセスとその応用』(2005・オーム社)』『プラズマ・核融合学会編『プラズマエネルギーのすべて――カラー図解』(2007・日本実業出版社)』『八坂保能著『放電プラズマ工学』(2007・森北出版)』『篠田傳監修『プラズマディスプレイ材料技術の最前線』(2007・シーエムシー出版)』『後藤憲一著『プラズマの世界』(講談社・ブルーバックス)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プラズマ」の意味・わかりやすい解説

プラズマ
plasma

高温加熱または電気的衝撃などによって正,負の荷電粒子に乖離された電離気体の総称を一般にプラズマと呼び,空間を自由に運動する荷電粒子の集合状態をいう。物理学でいうプラズマは,ほぼ同数の正の電荷と負の電荷を内在する電気的な伝導媒体であり,気体中の原子が電離することで生成される。この状態は,固体,液体,気体状態とは区別される物質の第四の状態ともいわれる。正の電荷をもつ粒子と負の電荷をもつ粒子が,同じ密度で共存して,全体として電気的に中性である物質状態を一般にプラズマと定義するが,普通は上述のように電離気体のことをいう。固体に熱などのエネルギーを連続的に加えると,初めに溶解が起り,次いで気化し,ついには気体の中性原子から電子がはぎ取られ,正電荷を帯びたイオンと負電荷の電子から成る全体として電気的に中性の混合物が生じる。気体のかなりの部分が電離すると,その属性が根本的に変化し,固体とも液体とも気体ともいえない状態になる。プラズマはイオン,電子,電気的に中性な原子と分子,そして光子の集合体と考えられ,プラズマ自体や電磁場といった周囲の環境と独特な相互作用をもつ。プラズマ内では,電子がイオンと再結合して電気的に中性の粒子を形成するのと同時に,原子が電離しており,光子は連続的に生成し吸収されている。太陽を含むすべての恒星星間物質および惑星の上層大気はプラズマで構成されており,宇宙を形成する物質の 99%以上はプラズマ状態で存在していると考えられている。地球上のほとんどの物質は固体,液体,あるいは気体状態で存在するが,稲妻,落雷,オーロラ,ケイ光灯 (→ケイ光ランプ ) ,ネオンランプアーク放電,気体放電の陽光柱の部分にプラズマが見出される。太陽や恒星は核融合反応によって莫大なエネルギーを生産している。小型の太陽プラズマを人工的につくることができれば,海水中の重水素を燃料として永久的なエネルギー資源にすることができる。これを核融合炉と呼び,現在世界各国で熱心に研究されている。 (→プラズマ振動 )  

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