翻訳|emission
物体から放出される電磁波や粒子の総称。電磁波の場合は波長により電波、マイクロ波、サブミリ波、遠赤外線、近赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ(ガンマ)線などとよばれる。電磁波は波動性と粒子性という二面的な性質(二重性)をもつが、波長が短くなるにつれてしだいに粒子性が顕著になる。また放射線とは、とくに波長の短い電磁波(X線、γ線)、および原子核崩壊などにより発生するさまざまな粒子線(α(アルファ)線、β(ベータ)線、中性子線など)の総称である。
電磁波は荷電粒子が加速運動する際に放出される。たとえば、固定点を中心とした荷電粒子の一次元的な単振動や等速円運動、高速度で飛来した荷電粒子の減速、加速、軌道変化などである。これらの加速運動により放出される電磁波の強度分布は、周囲の電界・磁界、およびそれらの時間変化を古典電磁気学で取り扱うことにより、かなり正確に計算できる。すなわち電波、マイクロ波の双極子(ダイポールdipole)放射、シンクロトロン放射、チェレンコフ放射、制動放射などである。これらの放射は、ある特定の方向に強く放出されるといった指向性がある。このため、熱輻射のように指向性のない場合に用いる輻射という用語は通常は使わない。
原子や分子から放出される電磁波は、古典論だけでは説明できない。その電磁波のスペクトルは、一般に連続ではなく離散的な構造をもつ。これは、原子や分子の離散化されたエネルギー準位構造を反映したものであり、その準位構造は量子力学でなければ説明できない。科学史的にはこの離散スペクトルの説明から量子力学が誕生したと位置づけられている。原子や分子からの電磁波放出には自発(自然)放出と誘導放出があり、後者を応用したのがレーザーである。
[石黒浩三・久我隆弘 2015年12月14日]
輻射(ふくしゃ)ともいう。狭義には物体が電磁波(光)を放出すること,または放出された電磁波のことをいうが,広義には原子核から出るα線,β線,γ線の放射線も含む。電磁波は一般に荷電粒子が運動状態を変えるときに放射される。原子・分子内の電子あるいは原子核内の陽子は一つのエネルギー準位からほかに遷移するとき光を放射し,それは同じ波長の光で刺激されるとき強い。巨視的には電子が速度を変えるとき放射が起こる。高周波の電流を流したアンテナからの電波放射やサイクロトロン放射,シンクロトロン放射はこれである。また物質内では光速が小さくなるので,それより速く荷電粒子が走ることがあり,そのとき一種の衝撃波としてチェレンコフ放射が起こる。熱振動する荷電粒子系と熱平衡にある放射は熱放射と呼ばれる。
→熱放射
執筆者:江沢 洋
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ふく射ともいう.電磁波または高速の粒子が放出されることの総称.電磁波の場合には波長により,マイクロ波,赤外線,可視光線,紫外線,X線,γ線などとよばれる.粒子線の放射については放射性核種より放出されるもの,および核反応などの結果放出されるものとして,α粒子,陽子,中性子,重陽子,電子などがある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…放射性同位体が放射性崩壊するときに放出される粒子線,あるいは電磁波のことで,α線,β線,γ線をさして用いられるが,X線や,加速器ビームの照射によって生成する中性子線などの二次粒子線,宇宙線など,同じ程度あるいはそれ以上のエネルギーをもつ粒子線,電磁波を含めていうこともある。程度に差はあるが,一般に,物質中で透過力をもつことが特徴である。放射性崩壊で不安定核がよりエネルギーの低い核へ変化するとき,そのエネルギー差が放射線粒子のもつエネルギーとなる。…
※「放射」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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