改訂新版 世界大百科事典 「プランクの放射則」の意味・わかりやすい解説
プランクの放射則 (プランクのほうしゃそく)
Planck's law of radiation
一般にはプランクの公式と呼ばれることが多い。絶対温度Tの物体と熱平衡にある放射が種々の波長の光をどんな割合で含むかを示す公式。物体を熱していくと鈍い赤色に光り始め,やがて黄色を経て青白く光り,ついに白熱するが,これは温度の上昇とともに短波長の光が多くなるからで,プランクの公式は黒体と呼ばれる理想物体についてこのことをよく表現する。1901年にM.プランクが熱放射の実験をよく再現する式として発表,理論づけの努力のなかでエネルギー量子の仮説に導かれた。やがてこの公式は古典物理学と両立しないことが認識され,量子力学への物理学革命の端緒となった。プランク自身は,光の波長λの代りに振動数ν=c/λ(cは光速)を用いて公式を書いた。絶対温度Tの熱放射のうち振動数がνとν+dνの間にある成分のエネルギー(ただし単位体積当り)はρ(ν,T)dνと書けて,これを熱放射に関するプランクの公式と呼ぶ。hがプランク定数で,彼がこの公式を書くとき導入し,ρ(ν,T)が実測値にあうように定めた。そのときボルツマン定数kも同時に決定された。赤い光(振動数~5×1014Hz)でもhν~3×10⁻19Jだから,T=1000KとしてもkT=1.38×10⁻20Jの20倍ちかく大きい。温度が1万Kになっても可視光の範囲では,とみてよい。νが増すとρは急激に減ることがわかる。
執筆者:江沢 洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報