エネルギー量子(読み)えねるぎーりょうし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エネルギー量子」の意味・わかりやすい解説

エネルギー量子
えねるぎーりょうし

力学系エネルギーが基本量の整数倍になっている場合、この基本量をエネルギー量子という。光はその典型的な例である。光の振動数をνとすると、この振動数の光のエネルギーはつねにhν(hプランク定数)の整数倍の大きさをとっており、他の値をとることはない。この場合エネルギーの基本量であるhνがエネルギー量子である(Ehν)。波長が656ナノメートルの赤色光の場合hνの大きさは、約1兆分の1のさらに1000億分の3ジュール(3×10-19ジュール)である。量子的状態のエネルギーはしばしばとびとびの値をとる。

 量子論確立の初期に、プランクは、熱平衡にある空洞の壁の振動子のとるエネルギーがエネルギー量子の整数倍であると考えた。ついでアインシュタインは光のエネルギー量子hνをみいだし、いずれも量子論の端緒となった(零点エネルギーの項参照)。

田中 一・加藤幾芳]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エネルギー量子」の意味・わかりやすい解説

エネルギー量子
エネルギーりょうし
energy quantum

M.プランク空洞放射測定値を十分説明できる関係式 (プランクの放射式 ) を見出したが,この式を導き出すには,振動数 ν の振動子のエネルギーの放出吸収が連続的ではなく,hν を単位とする不連続な量の放出・吸収だけが許される,と仮定せざるをえなかった。ただし,h はプランク定数である。この意味で,hν をエネルギー量子という。エネルギー量子の考えは,エネルギーの連続性を根本的な足場にしている古典物理学の自然観と正面から対立し,量子論を生み出す第一歩となった。この功績により,1918年プランクにノーベル物理学賞が授与された。プランクのエネルギー量子という考えは,A.アインシュタインによって光量子という考えに発展した。

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世界大百科事典(旧版)内のエネルギー量子の言及

【光】より

…原子や分子はそれぞれ固有の光スペクトルをもち,水素原子のスペクトルなどには顕著な規則性のあることが見いだされた。このことは前期量子論によって説明が与えられたが,その端緒となったのはM.プランクが黒体放射のスペクトルを説明するために用いたエネルギー量子の考え方である。彼は放射(電磁波)とエネルギーをやりとりして平衡状態になっている空洞の壁を振動子の集合とみなし,この振動子のエネルギーが,エネルギー量子hνを単位としたとびとびの値しかとれないとしたのである(プランクの量子仮説)。…

【量子力学】より

…固体の比熱は気体定数をRとして高温では1mol当り3Rだが(デュロン=プティの法則),温度を下げると減少し絶対零度で0になるという彼の結論は,彼の入手できたダイヤモンドなどの測定結果とよく一致した。この理論には,熱力学の第3法則を発見して低温の熱現象の実験を精力的に進めていたH.W.ネルンストが注目し,比熱の実測により強く支持したので,エネルギー量子のアイデアが広く受け入れられるようになった。
[量子化の規則の探究]
 人々の関心は調和振動子に限らず一般の系の運動を量子的にする規則の探究にむかった。…

※「エネルギー量子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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