孤立した物体,すなわち外部と熱のやりとりがなく力も及ぼしあわず,また物質の出入りもないようにした物体を長時間放置しておくと,巨視的にはもはや何の変化も認められない状態になる。この状態を熱平衡状態という。熱力学によると熱平衡状態は無秩序さの度合を表すエントロピーが最大の状態である。二つの物体が互いに熱平衡にあるというのは,熱の交換ができるように熱接触させても熱の移動が生じなくなった状態をいう。物体AとBが熱平衡にあり,BとCが熱平衡にあれば,AとCも熱平衡にある。これは熱力学の第0法則と呼ばれ,温度概念の成立の基礎を与える。すなわち互いに熱平衡にあれば,等しい値をとる量として温度が考えられる。圧力のような力を及ぼしあったり物質のやりとりも許されるときには,温度が等しいだけでなく力のつりあいなども熱平衡のための条件となる。
執筆者:恒藤 敏彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
【Ⅰ】熱的に接触している2物体の間,あるいは一つの物体の内部の異なる部分で熱がどちらにも移動しない状態.このとき,当然両者の温度は等しい.【Ⅱ】多数の粒子の集団の内部で,各粒子のもつエネルギーが,その温度に相当する平衡分布となっていること.熱平衡状態の平均エネルギーから,いちじるしくはずれた大きいエネルギーをもった粒子(高速中性子,高速電子,ホット原子など)が,分子衝突などによりそのエネルギーを失い,その温度に相当した平均エネルギーに近づくことを熱化(thermalization)という.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…温度とは熱い冷たいの度合であり,物理的には巨視的な物体の熱平衡状態を特徴づける量である。二つの物体を接触させると,熱は温度の高いほうの物体から低いほうに移り,最終的には両者の温度は等しくなる。…
…物質の磁気的状態が熱平衡状態に達するのに有限な時間を要することおよびそのために示される現象。物質中の非常に多数の電子,または原子核の磁気モーメントの集りからなる磁気的な系を考える。…
…一般に幼・少年期の体温は成人より高く,老齢期には低くなり個人差も大となる。
[熱平衡]
人体の1日代謝量を2300kcalとしよう。人体の仕事効率はせいぜい20%であるから,大部分は熱となる。…
…このような電流,熱流,気体の流れなど,なんらかの意味で流れの生じている現象が輸送現象であると考えてよい。 体系が熱平衡状態にあるときには,体系中にいかなる流れもあってはならない。むしろ,流れのないということが熱平衡の定義である。…
※「熱平衡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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