改訂新版 世界大百科事典 「プロバンシャル」の意味・わかりやすい解説
プロバンシャル
Les Provinciales
パスカルの書簡集。A.アルノーの依頼を受けて1656-57年にかけて匿名で執筆公表し,57年ルイ・ド・モンタルトの筆名で1冊にまとめられた18通の論争書。最初の10通が〈田舎の友(プロバンシャル)〉にあてられた形式を取っているのでこの名がある。執筆の出発点にあるのは,ジャンセニスム論争ならびにイエズス会を先頭とするポール・ロアイヤル攻撃である。パスカルはポール・ロアイヤル擁護の立場に立って恩寵問題を論じ(第1~4書簡,第17,18書簡),さらに決疑法の乱用から生じたイエズス会の道徳観の乱れを攻撃して(第5~16書簡),世論に大きな反響を呼び起こした。あるときは巧みな皮肉を,あるときは切迫した雄弁を駆使し,明晰で輝かしい文章に支えられた本書は,フランス古典主義の散文の手本となり,ラシーヌ,ボシュエを感嘆させたばかりでなく,現代に至るまで第一級の文学として読み継がれている。
→ポール・ロアイヤル運動
執筆者:塩川 徹也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報